税務調査官も人間です
税務調査といえば、突然怖い調査官がやってくる。。
そんなイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
でも、調査官も同じ人間です。
人間ですから、感情もあります。
見た目は完全無敵・冷酷にも見えますが。
調査官が怖いという気持ちが先行して、
・何も答えない
・非協力的な態度
を取るのは避けましょう。
税務調査は、納税者の方・調査官・税理士(いれば)
の三者でやり取りや交渉をしながら進めていくものです。
納税者の方の意見を聞かずに、一方的な判断でペナルティを課すということはありません。
有能な調査官とは?
調査官も人間と言いましたが、それゆえそれぞれに特性があります。
納税者の方にとって気になるのは、
税務調査にやってくる調査官が有能な方かどうか?
ではないでしょうか。
調査官が有能かどうかを見極めるポイントは調査前と調査中でいくつかあります。
1 調査前
税務調査が行われるまえに、事前に調査の連絡があります。
その際に、調査官の名前や所属を伝えられます。
この連絡は、税理士と契約していれば税理士に、そうでない場合は納税者の方にきます。
税理士に連絡が来た場合、税理士は調査官について知り得た情報をもとに
その調査官の属性を確認します。
税理士であれば、税務職員名簿なるものを持っています。
また、その調査官の過去10年間の歴任を確認することができる10年職歴という書籍も発売されています。
概ね2年ほどで役職変更があるといわれていますので、
これまでどのような役職を歴任したか、どこの税務署(または国税局)に勤めていたかを調べることができます。
税務署の上部組織が国税局ですから、国税局での勤務経験がある調査官であれば有能ということができます。
【税務調査】国税局調査と税務署調査、どう違うの?
ちなみに税務職員は国税局で勤務することを「本店勤務」と呼ぶようです。
本店勤務は名誉なことなのでしょう。
2 調査中
調査中は調査官と話したり、調査官の行動を直接見ることができます。
調査官の言動から、有能かどうか見極めるポイントをいくつか紹介します。
期ズレ調査を調査のメインにしない
期ズレとは、売上や経費を付ける期を間違えるという意味合いです。
正しくは当期に付けるべき売上を翌期に付けていたような場合です。
当期の売上はその分過少となりますから、利益も少なくなり、結果税金も過少になってしまいます。
正しい納税額との差額を追加で納めるとともに過少申告加算税というペナルティの税金が課されることになります。
ただ、このような指摘はあくまで期違いなわけで、
当期と翌期をトータルしてみると、売上総額は変わらないわけです。
追加で税負担をすべきは過少申告加算税のみということです。
(中小企業の場合軽減税率が使えますので、期により税率の差こそありますが)
よって、有能な調査官は期ズレ調査も行いますが、もっと本質的な調査を行おうとします。
例えば、役員給与。
税務調査で最もチェックされる事項といってもよいほどです。
事業とは無関係の社長個人の交際費を経費にしていた場合など、
社長への賞与とみなされる可能性があります。
この場合、以下の4税目にわたって広範囲に追徴課税が行われることになります。
・法人税
・消費税
・源泉所得税
・社長個人の所得税
調査官にとって期ズレを突くよりも調査効率も良いですし、無申告加算税など、より重いペナルティの税金を課すことができるわけです。
よって、有能な調査官はより本質的な調査に重きをおいて調査を行おうとします。
事業概況、取引の流れを的確に把握する調査官
調査官といえど、全ての事業に精通しているわけではありません。
業種の特徴さえあれど、会社によって事業内容は異なります。
事業内容が分からなければ、取引内容に合理性があるかどうかも判断ができません。
そして、会社の事業概況を最も知っているのは社長です。
よって、調査1日目の午前中に、会社の事業概況について調査官から社長に質問があります。
その際に、社長のハナシをよく聞き、取引の流れを分かってそうだ!
と感じる調査官は有能な調査官と言えるでしょう。
実際の調査の現場で、手もとの紙に簡単な取引図を描いている調査官を見たことがあります。
紙に描かないにしろ、話の展開のなかで取引を把握していると感じる言動があるものです。
逆に事業とは関係のないことを延々と聞いてくる調査官は有能ではない可能性が高くなります。
ここらへんの見極めは難しいところですが、
話や行動から感じるもので見極めていくことになります。
社長のハナシを良く聞く調査官
調査官の出世やボーナスは税務調査の結果次第です。
良い成績をあげられたら、出世コースにのれますし、ボーナスも多く支給されます。
よって、ペナルティを多く取りたいというのが調査官の本心です。
ただ、そればかりに意識が傾くと、「取ろう」という意気込みが強すぎて
調査官の思い込みが強くなったり、納税者の方とのやり取りを重視しない調査になってしまう場合があります。
つまり、本質的な調査は出来なくなってしまいます。
仮に、社長のハナシをよく聞かず調査が進み、後で調査官の思い込みだったと分かったら?
調査官にとってはこれまでの調査はすべて無駄になってしまいます。
社長にとってはラッキーでしょう。
そのような調査官は有能であるとはいえないでしょう。
有能な調査官は社長のハナシを良く聞いています。
そして、しっかりメモしていますし、記憶しています。
調査が数日に及ぶ場合でも、以前に聞いた内容と経理処理に相違があったり
違和感を感じた場合は、そこをポイントにさらに深堀りし本質を探ろうとします。
こういうタイプの調査官は有能でしょう。
社長にとってもどうでしょうか?
税務調査で調査官にじっくり話を聞かれると緊張するものではないでしょうか。
このような場合でも、調査をスムーズに進めるために、誠実に対応するのがベストです。
もし、緊張して受け答えに自信がないという場合は事前に税理士に相談することも有効でしょう。
スポット相談
まとめ・編集後記
有能な調査官の見分け方というお話でした。
いくつかポイントをあげましたので、参考にしていただけると幸いです。
そういえば、昔勤めていた会計事務所では、税務調査の連絡が来たら不機嫌になる所長とお局様がいらっしゃいました。
調査官の所属名って長い名前が多いんです。
「〇〇税務署○○部門〇〇課の〇〇です。」みたいなかんじです。
当時電話当番をしていた私は、調査官の所属を正しく控えられないときも。
調査の連絡がきたというピリピリモードもあいまって、その日1日は何かにつけて怒られっぱなしでした。
苦い思い出ですが、ネタの宝庫のような会計事務所でした。
その話はまたどこかで。