税務調査の種類
税務調査には2つの種類があります。
強制調査と任意調査です。
強制調査とは
強制調査は、その名の通り強制ですから調査を拒否する事ができません。
事前通知や納税者の同意を得ることなく、ある日突然調査官がやってきて調査が行われます。
調査官は、以前こちらの記事(【税務調査】国税局調査と税務署調査、どう違うの?)でも書いた国税局査察部(通称マルサ)です。
調査対象は巨額の脱税事案、かつ悪質な事案です。
犯罪となる脱税行為が特定されれば検察庁に告発され、刑事事件として処理されることになります。
調査官は裁判所の令状を取った上で調査に訪れます。
会社だけでなく、社長の自宅や取引先などの関係先も調査の対象となります。
それほどの調査が行われるわけですから、事前に確度の高い裏が取られているのです。
強制調査を拒否することはもちろんできませんが、虚偽の発言や証拠隠滅はより重いペナルティが課されることとなります。
調査後の検察官への告発率は6-7割にのぼり、告発された多くの事案で裁判において有罪判決を受けています。
任意調査とは
任意調査は、基本的には納税者に事前に連絡が行われた上で税務調査が行われます。
基本的にはとお伝えしたのは、まれに調査通知なしに突然実地調査が行われることがあるのです。
例えば、調査通知をすることにより、納税者に証拠資料を隠されたり夜逃げされてしまうような時です。
また現金取引の多い業種でも調査通知がない事があります。
任意調査は【任意】ですが、実は任意ではありません。
どういう事と思われるかも知れませんね(^^;
任意調査において調査官は、納税者に税金に関する質問をすることができる「質問検査権」を有しています。
一方の納税者は、任意調査であっても税務調査に応じる義務「受忍義務」があるとされています。
したがって、正当な理由なく調査官の質問に応じない場合には罰則が科せられ、納税者は質問に対して黙秘したり、虚偽の陳述をすることはできません。
任意調査の流れ
先ほどお伝えしたとおり、任意調査の場合は基本的に調査の事前通知があります。
事前通知の内容は以下の通りです。
・調査日時および場所
・調査の対象となる税目とその目的
・調査の対象となる期間(3-5年分)
・調査で確認する帳簿書類
・調査官の氏名と所属
事前通知は、顧問税理士がいれば顧問税理士に、いなければ納税者の方に直接連絡が入ります。
この際、調査日時に既に予定が入っている場合は調査日程の変更が可能です。
業務上の先約や冠婚葬祭など、合理的な理由があれば変更したからといって不利になる事なありませんので、日程調整をしてもらいましょう。
税務調査の事前通知は、調査の2週間ほど前に行われるのが一般的です。
事前通知の際に調査で確認を行う書類を伝えられますので、調査の日までに準備をしましょう。
この際、必要書類がないからといって、バックデイトを行うのはやめておきましょう。
バックデイトとは日付を遡って書類を作成する事です。
バレなければ大丈夫と思って軽くバックデイトを行うのは危険です。
経理書類はあらゆる書類や会計処理と関連付いているものです。
辻褄が合わなくなってしまいウソが見破られる可能性があります。
バックデイトは書類偽造にあたりますから、当然バレれば罪になります。
税金に関するペナルティが課される場合には、より重い重加算税が課される可能性もあります。
ないものはないとはっきり言った方が良いでしょう。
税務調査は大抵の場合、1-2日間で行われることが多いです。
いずれも10時から始まり、17時に終了。12-13時はお昼休憩です。
1日目の午前中は会社の概況からはじまり、社長個人の事など全般的な話がメインとなります。
ここでの注意点は、リップサービスをしすぎない事また、話を盛らないことです。
聞き上手な調査官は一見すると税金に無関係と思えることでも、調査の裏を取るために色々な角度から質問を変えてたずねているのです。
例えば、社長の趣味について。
会社の経費とプライベートの経費が経理処理上きちんと分けられているか、
などその後の調査の勘所を探っているのです。
もちろん、嘘はいけませんが「口は災いのもと」くらいの意識で応えることをおすすめします。
一方で、質問に何も答えないという事は認められていません。
ポイントは、聞かれた事にはっきりと簡潔な回答を心掛けることです。
1日目の午後から2日目は経理書類などの調査が行われます。
この間、ずっと社長が調査官の横で待機しておく必要はありません。
もし税理士がいれば、税理士に調査対応を任せることも可能です。
2日目の最後に、調査官から調査報告が行われます。
場合によっては追加で資料の提出を求められる可能性もあります。
税務調査終了後、約1ケ月後に税務署から正式な調査結果の報告がなされます。
調査の結果が問題なければそのまま終了となります。
調査結果に問題があった場合には税務署との折衝を行うこととなります。
その後は必要に応じて修正申告を行ったり、指摘事項に納得できない場合は更生手続きを行うようになります。
まとめ
税務調査は任意調査ですが、実質的に税務調査を拒むことはできません。
拒むことによって、かえって怪しい印象を与えてしまう可能性もあります。
とはいえ、税務調査の連絡が突然来たら、誰しも気が動転しますね。
そのような場合は自分ですべて対応しようとせず、税理士に相談することも一つの方法です。
スポット相談
また、税務調査は必ずしもペナルティが課されるものでもありません。
界隈で特殊な業種だったからや、事業規模が大きいから、など確認の位置付けで調査対象に選定されるケースもあります。
いずれにしても、日頃から真面目に経理を行っていれば過度に恐れる必要はありません。
経理に不安がある場合には一度税理士に相談されてみるのもおすすめです。