社会保険料の軽減スキームとは?
社会保険料はおおよそ額面給与の30%です。
うち、15%は支給者個人が負担し、もう半分は会社が負担します。
ひとり社長の場合、会社と個人はほぼ一体でしょうから、
30%の負担している感覚でしょう。
重税感は否めず、そのためか
以前から社会保険の軽減スキームを一部の社労士や税理士が提案しています。
社会保険料は、給与額面に決められた料率を乗じて計算します。
ただし、上限があり、
厚生年金保険料は給与月額が665,000円以上、
健康保険料は給与月額が1,355,000円以上は
いくら給与を支給しても社会保険料は同一です。
よって、役員報酬の月額を非常に低く抑え、
年に一度どかーんと支給すれば、社会保険料は頭打ち以上は納税しないですむわけです。
これを節税と呼んでいる方もいますが、
私は節税という言葉は当てはまらないと思っています。
税金的にはそこまでリスクはないのかもしれないけど
個人の税金は1−12月をひとまとめにして計算を行います。
よって、いついくら給与を支給しても
1年トータルで支給額が同じであれば税金も同じです。
強いていうなら、税務署から
極端に低い役員給与をNGとされた場合
給与の額に応じて変動する源泉所得税も少ないこととなるため
源泉所得税の徴収と納付漏れが起こってしまうリスクは考えられます。
税金以外のリスクはある
でも、他にもっとリスクがはらんでいます。
例えば、どかーんと支給する前に社長が亡くなって場合です。
12月1日にどかーんと支給することを決めておいて、7月1日に亡くなってしまったら、
12月1日の支給は受けられません。
というのも、役員の方への支給に対する考え方は賞与ではないからです。
従業員のように働いてくれた労いとしての賞与の性質と異なり、
役員の場合は契約にもとづいて事前にある時期に支給をするよと決めているだけです。
よって、亡くなって契約が失効すれば当然支給はしてもらえません。
当然遺族の方は腑に落ちないでしょう。
また、死亡による退職金の計算でも、役員給与をもとに計算が行われます。
極端に少ない場合、想定より退職金が少なくなります。
もしその役員に多額の相続税の納税が必要であれば、退職金も納税資金に充当することが考えられます。
しかし、役員給与が極端に少なければ退職金も乏しく
納税資金が足りない自体になることも考えられます。
メリットはなんだろう?
役員給与をどかーんと支給することのメリット、
実はそんなにないというのが個人的見解です。
過去に依頼を受け、シミュレーションをしたことがありました。
シミュレーションで初めて気づいたのですが、
軽減できるといっても数十万円が限度でした。
思ったより少ないなという実感です。
数十万円を取るために、デメリットを捨てるのは
合理的な判断とはいえません。
実際にシミュレーションをしてみると、
あまり効果がないな、ということがわかります。
責任の負えないことを軽はずみにすすめない
ここまでで挙げたデメリット以外にもうひとつ。
私が最も気になるのはモラルの点です。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」
のノリとは別の次元の話です。
でも、巷で税理士や社労士があたかも当然のことのように提案していれば
一般の方は信じてしまいます。
良いとか悪いとか、そういう判断を超えて。
だからこそ、私は責任の負えないことを軽はずみにはすすめません。
専門家としての責任問題に発展しかねませんし、
何より本当の意味で納税者の方のためにはならないと思うからです。
私自身は、これからも納税者の方の立場
自分のスタンスを崩さず発信を続けたいと思います^^