昨日のブログの結びに客観的な情報を残すことが重要と書きました。

いや、しかし。
もうすでに情報がない、証拠書類を捨てた・無くしてしまったという場合もあるでしょう。
また、どうしても証拠書類を残せないケースもあります。

本日はそのようなケースへの対応方法をお伝えいたします。

先に、本来の対応のハナシを少し

まず、本来なら経理や税金に関係する書類は、整理された状態で7年間保存する必要があります。
(累積赤字がある場合は10年です)

ではもし紛失してしまったら?

・税金上のお得な制度(青色申告)が使えなくなる可能性があります。

・消費税の計算方法を原則的方法で行っている場合、仕入・経費にかかる消費税相当額が経費にできなくなる可能性があります。

よって、本来納める必要のない税金を納める必要が出てきます。

過去に経理書類を提示しなかったことにより、追加で35億円もの消費税を納めた事案もあります。

たかが書類とあなどるなかれ、ということですね。

税務調査での重要な証拠書類ですから、しっかり残しておくことが基本です。
不安がある方は今日からしっかり残す意識を持ちましょう。

税務調査(個人事業主の方)
スポット相談

情況書類をできる限り集める

では本題です。

とはいえ、もう過去の書類を捨ててしまった、

という方もいらっしゃるでしょう。

この場合にできる調査対策は情況書類の積み上げです。

情況書類とは、証拠を補完する書類です。

例えば以下のようなものです。

・伝票
・契約書
・議事録
・稟議者
・社内規定
・経費精算書
・預かり証
・通帳の取引履歴

情況書類で事実関係を間接的に補完し、
取引の事実を証明していくことになります。

補完的位置付けと申しましたとおり、
証拠能力としては弱いですが、
ないよりあった方が良いということです。

こっちがなくてもあっちにあるかも!?

たとえば、経費の領収書を紛失してしまった、という時。

領収書はなくとも、預金から支払いを行なっていれば

預金の取引情報に履歴が残っています。

クレジットカードなどの電子決済を行なっている場合も然りです。

取引年月日、支払先、金額の情報が残っていれば、

情況書類として証拠になります。

つまり、領収書などの取引の直接的な証拠書類がなくても、

決済手段を情況書類として、取引証明を行うことも可能です。

そういう意味では、証拠がなくて最も困るのは実は現金取引です。

なぜなら、現金取引は

預金取引などのように取引の記録が第三者によって行われているのもと違い、

足がつきません。

ですが現金出納帳をつけている会社であればまだ可能性は残っています。

なぜなら、出納帳をつけるためには何らかの資料があると考えられるからです。

その資料を探して、情況書類として残しておきましょう。

それすらない!という時は

ここまでで解決できればよいですが、
それでも証拠書類が何もないという場合はどうすれば良いでしょうか。

そのようなケースは以下のパターンに該当することが多いでしょう。

パターンごとに対策を講じましょう。

・領収書や請求書が取引慣行上発行されないパターン

たとえば、慶弔金や謝礼金、自動販売機やチケット販売機での購入では、

取引慣行上、領収書が発行されないことがあります。

この場合、支払年月日、支払金額、支払先、支払内容を明らかにし

メモなどで残しておくと良いでしょう。

慶弔金の場合は招待状、案内状や社内規定、

自動販売機やチケット販売機の場合は、接待の相手先も

合わせて残しておきます。

取引相手の都合で領収書等を発行してもらえない場合も同様です。

金額が大きくなるものであれば、使途不明金とされた場合の影響も大きいです。

よって、先ほどの例示以外に、

社内稟議書ややりとりのメール、社内報告書や紐付きとなる売上データ、売上に対する一般的な原価率なども残しておくと良いでしょう。


・領収書等を捨てた・無くしてしまったケース

こちらの場合は、まず相手先に再発行の依頼を行いましょう。

これが最優先です。

ただ、相手先が廃業していたり、連絡がつかないこともあります。

その場合は、先ほど同様に

支払年月日、支払金額、支払先、支払内容を明らかにし

メモなどで残しておくと良いでしょう。

加えて、紛失に関する顛末書や報告書、

証拠に少しでも繋がる書類があれば残しておきます。

あくまで情況である

とはいえ、これまでお伝えした情況書類はあくまでも直接的な証拠がないときの補完的方法です。

よって、証拠能力は強くはなく、

情況書類があるからといって調査に必ずしも対応できるわけではありません。

よって、情況書類を揃えなくて良い体制を整えることが重要です。

先ほどお伝えしたとおり、無くて最も困るのは現金取引です。

現金取引を行わない体制を整えることで

最も困ることケースに該当しなくて済むこととなります。

また、現金取引をなくすことは、税務調査対策ばかりでなく

内部統制や経理の透明性向上にも役立ちます。

まとめ

本日は証拠書類がない場合の税務調査の対応方法についてお伝えいたしました。

直接的な証拠書類がなくとも、情況書類の収集は対策になります。
書類の再発行が可能な場合はそちらが優先です。

また、現金取引をなくしていくことも
税務調査に対策として有効ということをお伝えしました。

ご参考にしていただけたら幸いです!

横浜市緑区の女性税理士。 お金と利益をしっかり残す経営を サポートいたします。 銀行融資、経理、クラウド会計が得意。 税理士だけど、税理士らしくない。 親切丁寧なサポートを心掛けています。 お客様と一緒に成長していくことが私の想いです。 趣味は ・ランニング ・読書 ・料理 ・パン屋さんめぐり。