複数の事業者で協力して事業を行う場合、利益を分け合う契約を行うケースがあります。
インボイスとの絡みでは、該当事業者間の契約形態によりインボイス発行事業者の登録検討もありえるでしょう。
以下に詳しくお伝えします。
前提
わかりやすくするために以下の前提をおきます。
事業者A:貸衣装店を経営する法人(2期前の年商:1億円超、消費税は原則課税)
事業者B:カメラマン(2期前の年商:900万円、消費税は免税)
利益を分け合う割合 A:B=3:7
Aは貸衣装業を行うのと並行し、写真撮影も行なっている。
写真撮影はカメラマンであるBに依頼しているとします。
今回は、免税事業者Bの立場でインボイス制度の登録を検討します。
考えられる契約形態
考えられる契約形態は3つです。
ケース1は、
⑴お客様とAの契約
⑵AとBの契約
2つの契約があります。
利益分け合いにより、⑴の利益の7割をAはBに支払うことになります。
この場合、Aは消費税の課税事業者ですので、Bがインボイス登録をしなければ、
Bへの支払にかかる消費税はAの消費税計算上差し引くことができません。
よって、Bはインボイス制度の登録を検討する必要があるといえます。
ケース2は、
⑴お客様とBの契約
⑵AとBの契約
の2つの契約です。
利益分け合いにより、⑴の利益の3割をBがAに支払うことになります。
BはAに対して支払う立場ですので、消費税の検討は不要です。
そもそも消費税計算を行いませんので、Aへの支払にかかる消費税相当について
考える必要はありません。
また、Bは一般消費者(=消費税の免税事業者)であるお客様と契約しています。
こちらの契約においても、いずれも免税事業者(消費税の納税義務がない同士)のためインボイスの検討は不要です。
ケース1か2かは、仕事の実態に応じて判断することになるのでしょうが、
ケース1が多数ではないでしょうか。
ケース3は、AとBがお客様と個々に契約をする形態です。
利益を分け合う契約を前提にすれば、Aが3割、Bが7割をお客様から別に受け取ることになります。
窓口が2つに分かれてしまいますので、実際はこのケースはほぼないのでしょうが、
ケース2同様に、Bは一般消費者(=消費税の免税事業者)であるお客様と契約していますので、
いずれも免税事業者同士となり、消費税の納税義務はありませんのでインボイスの検討は不要です。
Bが法人成りを検討したらどうなるか
インボイス登録と消費税の申告・納税はセットです。
仮に、Bが個人事業主でインボイス制度開始に合わせて登録すると、
2023年10月1日-12月31日は消費税計算・申告の義務が生じます。
では、それを避けるために法人化を検討するのはどうでしょうか?
法人化すると、最初の2期間は基本的に消費税を納める必要がありません。
ただ、その場合でも、ケース1ではBがインボイス登録をすることに変わりはないでしょうから、
法人化した1期目からインボイス登録事業者=消費税の課税事業者となります。
インボイスを見据えた法人化の意味はないということが言えます。
Bの2023年の消費税額は?
Bが制度開始に合わせてインボイス登録した場合、
いわゆる2割特例が使える可能性が大きいです。
2割特例は売上の消費税の2割を納税する計算方法です。
10月以降の売上が仮に330万円なら、消費税相当(30万円)の2割なので、
6万円を納税することとなります。