なぜ棚卸資産の処理が重要なのか?
まず、本日の話は全ての方にあてはまる話ではありません。
サービス業などの棚卸資産がない業種の方は、スルーしていただいて大丈夫です!
一方、モノを買い→付加価値をつけ→販売する
このような業種の方にとっては知っておいていただきたい話です。
例えば、卸売業・小売業・物販・飲食業・ネット通販・病院・ソフトウェア開発などです。
そもそも棚卸資産とは、決算日現在で手元にある販売前の商品です。
商品だけでなく材料・製品・仕掛品・貯蔵品や、
目に見て把握することのできない製造現場の人件費もそうです。
税金上は、売上と仕入は紐づきで同じ決算期に処理しなければなりません。
棚卸資産は売上前の状態のものですから、
当然に仕入にすることができません。
そのため、資産にあげて売上が上がるタイミングで仕入(経費)に振替処理を行います。
この資産にあげる金額次第では、
経費をいかようにも調整できてしまうわけです。
しかも会社内部の処理であるうえ、
翌期には仕入(経費)に振替られて痕跡がなくなるわけですので、
利益調整に使われやすい勘定科目であるといえます。
よって、税務調査でも売上・仕入に次いで必ず確認されるポイントとなります。
税務調査(個人事業主の方)
スポット相談
税務顧問
棚卸資産の正しい処理
棚卸資産の計算方法
決算日時点の単価✖️数量
こちらが棚卸資産の計算方法です。
算出した金額を、決算日の日付で経費から棚卸資産に振り替えます。
消費税の経理処理によって、単価に用いる金額が異なります。
税込で経理処理を行っている場合は、税込単価を
税抜で経理処理を行っている場合は、税抜単価で計算します。
また、特段の届出を行わない限り
決算日に最も近い日に仕入れた金額を単価として計算を行います。
棚卸資産にするものの範囲
棚卸資産にするものの範囲も大切です。
なぜなら、棚卸資産にすべきものをせず、
間違って経費にしていたら、
その分経費が過大→利益が過少→税金も過少になり、
過少申告となるからです。
具体的には、商品そのもののだけでなく、
以下の付随する費用も棚卸資産にしなければなりません。
・引取運賃
・荷役費
・運送のための保険料
・購入手数料
・関税 など。
「運送費」、「保険料」、「支払手数料」などの経費にあたる勘定科目で処理をしていませんか?
決算日までに売上が行われていない商品にかかるこれらの支出は、
経費でなく、棚卸資産になりますので注意が必要です。
棚卸資産の廃棄や評価損
決算に時点に販売していない商品は棚卸資産として資産にする必要があります。
一方で、その商品が傷付いていたり、市場価値がなくなっている場合、
棚卸資産の価額を切り下げ損失を出すことができます。
ただし、これはとっても危険です。
実際に調査で否認された事例も見てきました。
自分の主観で、
流行りが去った、傷んでいるなどの理由で損失を出してはいけません。
廃棄するのであれば、
その事実を客観的に確認できる書類を残すべきです。
また、評価損を算出する場合も納得できる根拠が必要です。
なんとなく、この金額ではNGです。
在庫調査の目の付けどころ
あると考えられる棚卸資産がない
物を仕入れて販売する業態の場合、
通常は貸借対照表の資産の部に棚卸資産の金額があるはずです。
その金額がなければ、「怪しい」わけです。
なぜなら、在庫が1つもない状態では商売は成り立ちません。
ということは、あげるべき棚卸資産をあげられていないことが推測できます。
このケースでは、調査時というより
その前段階の税務署内での決算書分析の際にすでにチェックされていると考えられます。
棚卸資産の計算が適切か
棚卸資産の集計は「単価✖️数量」とお伝えしました。
単価は決算日に最も近い日の仕入価額を用います。
また、数量も実地の数量を漏れなく集計する必要があります。
計算根拠と集計の過程をきちんと説明できるようにしておく必要があります。
決算日前後の売上・仕入状況の確認
決算日前後の仕入と売上の関係性は確認されるポイントです。
仮に、決算月の仕入が他の月と比較して多かったり、
決算月だけ原価率が高ければ、確認のポイントとなります。
売上の基準との整合
売上を上げる基準にはいくつかの方法があります。
認められた方法の中から選択することができます。
一般的には、取引先に商品を引き渡した時です。
他方、取引先が商品の検収をした時に売上を上げることも認められています。
その場合、決算日時点で自分の手元に商品がなくとも
取引先での検収が済んでいなければ
棚卸資産にしなければなりません。
売上があがっていないのに、仕入(経費)だけあげるのはNGです。
社外在庫の確認
商品の保管先に別途倉庫を借りたり、
自分の会社を通さず、仕入先に預けて販売先に直送するケースがあります。
その場合でも、決算日に未販売の商品があるなら棚卸資産を認識しなければなりません。
目に見えるところにないからといって、
上げる必要がないわけではありません。
編集後記
本日は棚卸資産に関する税務調査のポイントをお伝えしました。
特に、通常あると考えられる棚卸資産が決算書上にない場合は、
調査先として選定される確率もあがります。
また、確定申告期限は決算月プラス2ヶ月後です。
申告期限間際で棚卸資産を把握しようとしても時すでに遅し、です。
決算日時点の在庫を集計しなければならにことを事前に知っておき、
決算日に実施することを忘れないようにしましょう!