遺留分とは

遺留分とは、ざっくり言うと亡くなった方(以下「被相続人」)と近しい関係性のある人の財産を守る制度です。
近しい関係性とは、相続人(財産を引き継ぐ人)となる配偶者・子・直系尊属(父母、祖父母)です。

この制度は、配偶者・子・直系尊属は、被相続人による経済基盤を失うことになりますから、
被相続人がお亡くなりになった後の生活維持として一定程度の財産を引き継ぐことが重要との考えのもとの制度のようです。

また、被相続人の生前の生活を支えていたこと(内助の功のイメージです)からしても、
当然に財産を一定程度引き継がせてあげるべきという考え方もあるのだと思います。

一方で、相続では亡くなった方の生前の遺志を託した遺言書が最優先されます。
万一亡くなった方が「全ての財産を愛人に」という遺言を書いていたらどうでしょうか。

被相続人の配偶者・子・直系尊属は生活維持が難しくなるかもしれませんし、
これまでの家族関係はなんだったんだという気持ち的な確執も生じてしまいます。

遺留分を知っておきたい理由

そこで知っておきたいのが遺留分制度です。
先ほど言った通り、相続人(配偶者・子・直系尊属)の財産を守る制度です。

この制度があることにより、先ほどの例のように
「1億円の財産を愛人に相続させる」という遺言があったとしても
配偶者・子・直系尊属は遺留分を主張(遺留分侵害額の請求)を行うことで
一定の財産を取得することができます。

ただし、遺留分侵害額請求は名前のとおりあくまで権利であることは注意しなければなりません。

どう言うことかというと、権利は行使しないと効力を生じないということです。
役所や誰かが「あなたの遺留分を取り戻しましたよ」と手続きをしてくれるわけではありません。

したがって自分で動かなければなりません。
この場合、遺留分を侵害した相手との協議がまずのとっかかりです。
それで解決しなければ、手続きを踏んだうえで調停となります。

他にも遺留分には時効があることには注意が必要です。
・被相続人が亡くなったことそして、自分の遺留分が侵害されていること(例であれば遺産の全てが愛人に渡っていること)を知ったときから1年
・仮に遺留分の侵害に気づかなければ10年です。

最長でも10年を超えると遺留分侵害額請求権は消えてしまい、使うことはできません。

また、遺留分侵害額請求権を使える人が限られていることも注意が必要です。

先ほど、配偶者・子・直系尊属に与えられた権利と書きました。
したがって、兄弟姉妹には認められません。

遺留分を考慮した遺言が必要

亡くなった後に、大切な人や親族同士で遺留分をめぐる争いが生じることは被相続人ののぞむところではないでしょう。
よって、遺留分侵害額請求が起こらないような遺言書作成が必要といえます。

愛人に財産を渡すとしても、権利者(配偶者、子、直系尊属)の遺留分を侵害しない範囲で遺贈を行う必要があります。
仮に全額愛人に遺贈し、権利者から遺留分侵害額請求を受けた場合、愛人は侵害した金額を金銭で支払わなければなりません。

愛人に遺贈した財産が全て不動産だったらどうでしょうか。
金銭が手元にないため不動産を売却して資金化する必要があります。
しかし不動産譲渡における所得税負担は遺留分の考慮外です。
思わぬところで税金負担が発生する可能性があります。

まとめ

遺留分はあまり聞かない言葉かもしれません。
今回は愛人の例でしたが、長男だけ、のときも同様の考え方になります。
つまり誰かひとりに財産を引き継がせるといった、相続人にとって公平性がないといえる
財産の引き継ぎをしようとする場合は考えておかねばならない制度です。
少しでも参考になりましたら幸いです^^

横浜市緑区の女性税理士。 お金と利益をしっかり残す経営を サポートいたします。 銀行融資、経理、クラウド会計が得意。 税理士だけど、税理士らしくない。 親切丁寧なサポートを心掛けています。 お客様と一緒に成長していくことが私の想いです。 趣味は ・ランニング ・読書 ・料理 ・パン屋さんめぐり。