銀行とのやりとりは必ず履歴が残っているもの
銀行融資を受けている場合、当然ながら銀行とのやりとりが発生します。
・新規申し込み時の書類提出
・事前面談
・融資審査 など。
また、融資が通ったあとも、定期的に事業の報告を行います。
報告時は決算書、決算から3ヶ月以上経っていればその時点の試算表を提出します。
ところで、これらの面談履歴や提出資料を
銀行は全部控えています。
というのも、銀行員は数年ごとに支店を転々とします。
行内の情報共有のためにも捨てることはありません。
つまり、銀行に提出した資料、面談で行ったことは
すべて言質が取られているということです。
反面調査は銀行も対象先
反面調査という言葉があります。
税務調査の対象となる会社・個人の方の関係先へ調査を行うことです。
対象先の調査だけでは調査が困難な場合に行われます。
裏取りの位置付けです。
関係先には取引先、従業員やその家族がありますが、
その中に銀行もあります。
銀行が好む決算書・脱税目的の決算書
銀行が好む決算書は黒字の決算書です。
現預金の残高や自己資本など、他の要素もありますが、
黒字であることの評価は高いのです。
よって、融資を受けたい事業者は
粉飾決算をはたらき、売上の水増しを行なうという話があります。
売上が上がれば利益も残り黒字になりますので。
(粉飾決算はすぐにばれますし、1回きりのつもりが泥沼化します、
という話は脇道にそれるので置いておきます)
一方、税金が少なくなるのは赤字の決算書です。
赤字であれば、最低限の法人税のみ納付すれば良いのです。
つまり何が言いたいのかというと、
・銀行が好むのは黒字の決算書
・税金が(ほぼ)出ないのは赤字の決算書
で全く逆の決算書がそれぞれ必要になるわけです。
粉飾決算は本来なら赤字であるものを黒字に見せかけるわけですから、
資金繰りに窮している会社が行う場合が多いのです。
ただ、黒字にしてしまうと税金が発生しますね。
このような会社は税金も納めたくないとの考えが働きがちで、
脱税も行う可能性が高いのです。
税務調査で辻褄が合わないことに
では、このような会社はどうするでしょうか?
それは、銀行向けの黒字の決算書と税金対策のための赤字の決算書
の2つの決算書を作成するのです。
裏帳簿というものです。
しかし、冒頭でお話ししたように、
銀行に提出した資料は全て履歴が残っています。
税務調査の際、銀行に反面調査が行われれば、
調査官の手元にある決算書と
銀行に控えている決算書が全く反対の結果となっているわけですから
裏帳簿が発覚してしまいます。
裏帳簿の作成は最も重いペナルティの重加算税の対象です。
資金繰り対策でやったつもりが、
重加算税により資金不足に一気に拍車をかけることになります。
誠実な対応がいちばん
このようなケースでは、脱税をしようと思ってやったわけでなくとも
結果的に脱税になるのです。
最初のきっかけは、銀行にいい顔(粉飾決算)をしたことがきっかけです。
一度粉飾決算をしてしまえば、
それをゼロに戻すには数倍の利益が必要です。
また、今回のように関連して脱税に発展することにもなりかねません。
銀行に対して誠実な対応をすることが大事ということです。