融資を考える上で大事なメインバンク

メインバンクとは、利用頻度が最も多い銀行のことをいいます。
メインバンクには以下の特徴があります。

・融資額が最も多い
・プロパー融資を最も出してくれる
・預金残高が最も多い



近年では、利用頻度が最も多い銀行がネット銀行という会社も多いですが、今後少しでも融資による資金調達の可能性があるのなら、信用金庫・信用組合、地方銀行をメインバンクにすることを検討しても良いでしょう。

なぜなら、全国展開しているネット銀行よりも、自分の会社にあった地元のメインバンクを持つ方が、会社の需要に対応した柔軟な融資を行ってくれる可能性が高いからです。

それでは、メインバンクを持つことの具体的なメリットを確認してきましょう。

メインバンクをもつメリット

1.プロパー融資を多く行ってくれる

 プロパー融資とは、銀行が会社に直接行う融資のことです。
 よく比較される言葉に「保証協会付融資」があります。

 プロパー融資と保証協会付融資の違いは、会社が返済できなくなったときにどこがリスクを負うかの違いです。

 プロパー融資の場合は、返済リスクを銀行が100%負います。
 会社が返済できなくなってしまった際には、銀行にとっては「貸し倒れ」となり、損失を100%負うことになります。

 一方、保証協会付融資の場合、信用保証協会が会社に代わって銀行に返済を行います。
 もちろん、保証協会が代りに銀行に返済してくれたからといって、会社の返済義務がなくなるわけではありません。
 会社は返済を肩代わりしてくれた保証協会に返済をしていかなければならないことになります。

 話を戻して、銀行にしてみれば、信用保証協会付融資は、仮に貸付先の会社が返済をできなくなったとしても代りに保証協会が返済を肩代わりしてくれるので、リスクの少ない融資ということができます。
 そのため、融資の受けやすさは、プロパー融資<信用保証協会付融資となります。

 一方、保証協会付融資の保証には上限額があります。
 一般に無担保融資であれば8千万円(担保を含めれば2億8千万円)です。
 ただ、これは公表されている金額であり、実際には無担保で上限の8千万円を保証してくれる会社の方がまれです。
 会社の規模にもよりますが、月商の3か月分程が保証上限と考えておいて良いでしょう。

 そのため、融資を受けやすい保証協会付融資は経営状況が悪くなった際の使い道として残しておき、プロパー融資を積極的に使っていきたいというのが会社の採るべき方法ということになります。

 先ほども述べたように、プロパー融資は銀行にとってリスクの大きい融資です。
 つまり会社と銀行の利益が相反する融資であるといえます。
 そのようなプロパー融資にも応じてくれるのがメインバンクです。
 つまり、一番会社のリスクを負ってくれる銀行ということです。


2.つなぎ資金などの資金需要にも対応し柔軟に融資を行ってくれる

 「つなぎ資金」とは、仕入資金の支払が売上代金の入金より先行する場合に、その間の資金繰りをつなぐための資金です。
 売上代金の入金をもって融資の返済にあてます。

 仕入先行型の業種では、売上が大きくのびるときや、季節的な需要の拡大など、仕入れ資金が必要な場合が少なくありません。
 そのような場合に、会社の資金需要を考慮し、柔軟に融資の対応をしてくれるのがメインバンクです。


3.業績が厳しいときでも融資に応じてくれる

 平常時はもちろんですが、会社の業績が厳しい時、資金調達がうまく行かなければ会社が窮地に立たされることは容易に想像がつきます。
 会社と銀行双方でメインバンクという認識が一致していれば、メインバンクは会社の業績が悪くなった時も、会社を支えようと協力してくれるのです。(もちろん、メインバンクだからといっていつでも融資をしてくれるとは限りません。毎期連続赤字、経営改善の方向性も見えないといった場合は難しいです。)
 この点でも、他の金融機関と比較し、リスクを取った融資にも対応の姿勢を示してくれるのがメインバンクと言えるでしょう。

メインバンクになってもらうには

では、どのようにして「メインバンク」と言える関係を築いていけば良いでしょうか。
メインバンクとの関係は、「今日からうちの会社のメインバンク」になってくださいといって始まるものではありません。

メインバンクになってもらうために意識したいポイントを3つ紹介します。

1.融資以外の銀行取引を行う

 融資による貸付利息は、銀行の収入を支える柱のひとつです。
 しかし、低金利かつ銀行間の競争が激しい今の時代に利息収入だけでは銀行も存続が難しくなっています。
 そこで意識したいのが、メインバンクとして取引したい銀行に、仕入・経費の決済口座を指定するという方法です。
 決済の際に発生する手数料は、銀行にとっての収入となるからです。

 また、会社の売上代金の入金口座に指定するのも有効です。
 銀行は自行の口座であれば、会社の資金残高や取引履歴を把握することができます。
 お金の流れを可視化することにより、会社の信用度が上がるというメリットがあります。


2.自分にあった規模の銀行を選らぶ

 自分がメインバンクだ、と思っていても、銀行側からそう思われていなければ、メインバンクのメリットは期待できません。
 融資取引が最も多い、預金残高が最も多い、というのはあくまで会社側からみた視点であるということに注意が必要です
 
 銀行は多くの会社と取引があるため、規模の大きい会社の方が受け取れる収入も多くなります。
 つまり、会社の規模により、選ぶべきメインバンクが異なるということになります。
 メインバンクの選定は会社の規模の大きさに比例して、信用金庫・信用組合<地方銀行<メガバンク
 と考えるのが一般です。

 年商1億円未満の会社であれば、近隣の信用金庫・信用組合が理想のメインバンクになります。


3.不義理を行わない

 メインバンクとの良好な関係維持には信頼関係を築くことが欠かせません。(人間関係でも言えることですね(^^;)

 粉飾決算による嘘の決算書を出すなどといったことはあってはなりませんが(この場合、融資担当者には見抜かれていることがほとんどです)、例えば、融資残高の一括返済も気を付けなければなりません。
 
 会社は、良かれと思って借金を早期に返済したつもりでも、銀行にとっては、予測していた利息収入がなくなるわけですから、好ましいことではありません。

 また、他行による借換も銀行にとっては利息収入を失うことになります。
 それだけでなく、メインバンクとして会社を支えていたという思いを裏切ることになり、銀行との関係性を悪化させることとなります。

 日頃から銀行との信頼関係を築いておくことこそ、会社がピンチになったときに、メインバンクとして手を差し伸べてくれるということを意識しておきたいところです。

まとめ

いかがだったでしょうか。
会社の業績は良いときもあれば悪い時もあるものです。
業績が悪くなってから、「御行がメインバンクだ」といっても銀行としては普段から付き合いがない以上、積極的な支援が期待できないことが多いでしょう。
メインバンクとの関係は、「今日からうちの会社のメインバンク」になってくださいといって始まるものではありません。
悪い時も見据えて、通常時からメインバンクを意識することは会社を守るうえでも検討したいものです。

横浜市緑区の女性税理士。 お金と利益をしっかり残す経営を サポートいたします。 銀行融資、経理、クラウド会計が得意。 税理士だけど、税理士らしくない。 親切丁寧なサポートを心掛けています。 お客様と一緒に成長していくことが私の想いです。 趣味は ・ランニング ・読書 ・料理 ・パン屋さんめぐり。