勧誘は断って良い

銀行から融資を受けるとき、融資と一緒に定期預金の契約や投資信託の購入、保険契約の提案を受けることがあるかもしれません。
銀行は融資による利息収入以外に、投資信託や保険契約による手数料収入、融資先に不測の事態が生じた時に備えて定期預金を担保にすることを考慮して提案を行っているのです。

社長からすればどこまで銀行の要求に応じれば良いのかわからないものですよね。
とはいえ、銀行から言われるがままにいろいろな契約をしてしまってかえって会社の資金が資金繰りが悪化する事態になることも。

融資契約の際にこれらの提案があった場合でも、基本的には断って問題がありません。
せっかく融資で調達した資金ですから、事業のために使うのが正しい資金
使い方です。

それでは、勧誘を受けた場合の対応について詳しく見ていきましょう。

法律的にNGの勧誘の可能性も

①投資信託の購入を勧められたら?

融資を受ける際に銀行との対話の中で、
投資信託のAと言う商品を買っていただけたら融資いたします。
 という話があったとします。

 このような会話があったら注意です。
 なぜなら、独占禁止法と銀行法で禁止されている行為に当たるからです。
 融資の引き換えに他の商品の購入を条件とする事は、違法な抱き合わせ販売といえます。
 抱き合わせ販売は独占禁止法で禁止されています。

 現在このような提案をしてくる銀行担当者はほぼいないでしょうが、
 もしまだこのような提案をしてくる担当者がいたら、不要なトラブルに巻き込まれないためにもしっかり断りましょう。

 そもそも融資により銀行には利息収入が生じます。
 それに加えて投資信託による手数料収入まで抱き合わせて販売する必要はありませんよね。
 
 融資先の会社のことを考えたら、融資で調達した資金の全てを事業に投資して利益を上げてもらいたいと思うのがあるべき銀行担当者の姿といえます。
 それにもかかわらず、違法であると知りながら自分の営業成績に方が優先されてしまっている点で、信用に値しない担当者と考えられます。

 では「融資の事は一旦おいておいて、投資信託のBという商品の購入を検討いただけませんか?
 と提案された場合はどうでしょうか。

 実はこの場合も独占禁止法の違反になる可能性があります。
 
 なぜなら、このような提案を受けた社長は銀行との関係悪化を避けて、この商品を買っておいた方が良いのではないかと頭の中で考えます。
 これは実質的に強制購入を求めているわけですから、銀行の立場の優位性を利用した不正取引と考えられます。
 また銀行法においても同様の制約があり、違法となる可能性があります。
 先ほどの場合と同様に断って問題ありません。

②保険契約を勧められたら?

 ①の場合と同様に、保険契約も抱き合わせ販売と考えられ禁止されている行為です。
 それに加え、銀行が保険販売を行うことは他の種々の規制にも違反する恐れがあります。

 例えば、融資先募集規制では、銀行は事業性資金の融資先に対し手数料を得て一定の保険商品(※)の募集を行ってはならないとされています。
 ※一定の保険商品は、定期保険、平準払終身保険、貯蓄性、製造、保険、医療、介護保険等です。

 また銀行が会社に対し、事業性資金の融資を行っていることを知りながらその会社を契約者とする一定の保険商品(※)の募集を行うことは禁止されています。
 さらに銀行が融資を行っている会社の代表者に保険募集を行うことも禁止されています。

 保険契約の締結を勧められた場合も、不要なトラブルに巻き込まれないためにしっかり断りましょう。

③定期預金を勧められたら?

 定期預金を勧められた場合、①②のようにただちに独占禁止法となるとは限りません。
 なぜなら、会社に不測の事態が生じたときの返済遅滞を避けるためには意義があるからです。
 これは銀行側の立場からすれば債権者保全(貸したお金を回収するするための施策)という考え方になります。
 
この点について、金融取引報告書に記載があります。

自己の提供する金融商品・サービスの購入要請

  • 債権保全に必要な限度を超えて、融資に当たり定期預金等の創設・増額を受け入れさせ、又は、預金が担保として提供される合意がないにもかかわらず、その解約払出しに応じないこと。
  •  借り手企業に対し要請に応じなければ融資等に関し不利な取扱いをする旨を示唆して、自己の提供するファームバンキング、デリバティブ商品、社債受託管理等の金融商品・サービスの購入を要請すること。
公正取引委員会「(平成18年6月21日)金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書(概要)」

 難しく書かれていますが、銀行が貸付金を回収するために必要な金額内の定期預金契約であれば、融資の条件にすることが認められるということです。

 例えば、会社の入金忘れに備えて1回分の返済金額を定期預金に入れてもらっておくなどは許容される範囲と考えられます。一方で、その金額が過大である場合は抱き合わせ販売等に違反するということになります。
 
 なお、定期預金の契約自体は適法であったとしても、銀行側が解約を拒む事は認められません。
 会社の資金繰りが厳しい中で、定期預金を解約しようとしたら銀行に止められた、というのはよく聞く話です。
 定期預金を融資の担保に入れていなければ、解約をしてもらうよう粘り強く交渉する必要があります

 将来の資金繰りがずっと順風満帆な会社はそれほど多くないものです。
 資金繰りが一時的に悪化する事態に備えて、融資の際に同じ銀行で定期預金を作ることや、融資を受ける前にすでに定期預金がある銀行で融資を受けることはなるべく避けた方が良いと言えるでしょう。
 すぐに資金を引き出したいときに、銀行からのストップがかれば、その分の時間ロスによる損失は大きいので。
 
 ただ、一方で融資と見合いの担保(=定期預残高)があれば金利交渉が行いやすいというメリットもあります。
 しかし、金利交渉の方法はこれ1つに限られませんので、融資の際に定期預金契約の勧誘を受けても積極的に応じる必要はないと考えられます。

まとめ

いかがだったでしょうか。

融資の際に銀行商品の勧誘を受けた場合、基本的にはすべて断って問題ありません。
融資で得た資金は事業のために使うのが本来の使い道だからです。

ただ契約の場で勧誘があれば、人間は不思議なものであれよあれよと契約してしまったりするものです。
銀行の意図や法律知識を抑えつつ、銀行との付き合い方を考えたいものです。

横浜市緑区の女性税理士。 お金と利益をしっかり残す経営を サポートいたします。 銀行融資、経理、クラウド会計が得意。 税理士だけど、税理士らしくない。 親切丁寧なサポートを心掛けています。 お客様と一緒に成長していくことが私の想いです。 趣味は ・ランニング ・読書 ・料理 ・パン屋さんめぐり。