財務内容だけでなく、「人」も大事な判断材料

銀行が融資の判断を行うとき、いろいろな角度から会社を分析ししています。
財務内容のみならず、事業内容や会社に属する「人」も分析対象です。
この場合の「人」とは、銀行の取引先となる会社の経営者や従業員のことです。
銀行が取引をする相手として適切でない経営者と判断されてしまえば、当然ながら銀行は融資を行ってくれません。


では、銀行は経営者のどのような部分に重きをおいて融資の判断しているのでしょうか。
本日は銀行が行う取引先調査のうち、会社に属する人について、銀行が重視しているポイントを確認していきたいと思います。

社会的に問題がないか

まず、経理者に以下のような属性がないかをチェックします。

①違法な行為を行っていないか
 言うまでもありませんが、違法な行為、不当な行為を行っている場合、またはそのつながりが示唆される経営者には融資を行うことはできません。

②違法営業を行ってないか
 許認可が必要な事業を行っているのにもかかわらず、無許可、無届けで営業を行っている場合も、いくら業績が良くても銀行は融資を行いません。いつ営業ができなくか分からない取引先には融資を行えないという考え方です。

③融資を行うことが社会的に問題視される可能性のある取引先
 例えば、マルチ商法や闇金など、公序良俗に反する事業に銀行が融資を行ってしまえば、社会的に問題視される可能性があります。そのような事態を避けるためにも、これらの事業を行っている経営者の会社には融資は行われません。

なお、①から③に該当しない場合でも株主や役員が①から③の関係者であれば、同様に融資は不可能です。

面談前~決算書から人柄の推測~

銀行との面談を行う前に、事前資料として決算書の提出を求められることがあります。
銀行の融資担当者は、決算書で財務内容の確認をしているだけに留まりません。
直接経営者に会う前から、事前に入手した決算書から経営者の人柄を推測しているのです。

「決算書1枚で人柄まで分るものなのか?」と思われるかもしれません。
しかし、決算書の貸借対照表上の資産の部や、損益計算書の販管費を見れば、経営者の人柄はおのずと見えてきます。

例えば、貸借対照表の資産の部。
事業に関係のある項目ばかりが記されている会社の場合、その会社の経営者は、真面目で実直な性格と推測することができます。

一方で、ゴルフ会員権やリゾート施設の会員権、単なる投資目的と考えられる投資有価証券の記載が目立つ会社はどうでしょうか。
事業と直接関係があるとは言い難い資産の記載が目立つ場合、誤解を恐れず言うと経営者の個人の資金を会社のお金で賄っている会社と判断されても仕方のない状況です。

また、損益計算書の販管費に売上対比としては多い割合の交際費が計上されている場合も同様です。
経費削減の意識や会社の利益を残すということに無頓着な経営者であると判断されてしまう可能性もあります。

当然ですが、銀行は貸したお金を返してくれる事が大前提ですので、真面目で実直な経営者に融資をしたいと考えます。

面談時~人柄の確認、追加情報の取得~

1.経営者を見定めるポイント

前述したとおり銀行の融資担当者は、面談前に決算書を確認し大まかな経営者の人柄を推測しています。
そのうえで、経営者を自分の目で見て、自分の推測と実際の人柄が異なっていないかや、決算書では汲み取りきれない経営者の資質を確かめようとします。

その際に見られるポイントは、指導力、決断力、実行力、責任感、健康面などが挙げられます。

指導力は、会社を引っ張っていく力、従業員をまとめ上げ、統率していく力です。
融資担当者が見ている時だけ一時しのぎで取り繕ってみせても、たいていの場合それが一時的なものだと見透かされているものです。相手もプロですから。

例えば、経営者と従業員とのやりとりや社内の雰囲気などで、その経営者が日頃から従業員に慕われているのか、経営者の統率力に問題がないのかなどを感じ取ることは可能です。
いくら経営者自らが指導力があると言っていても、現場のやり取りを見て違和感があれば、容易に見透かされてしまいます。

また、決断力や実行力は会社経営をするうえで日々必要とされる資質です。
経営者に決断の度量があり、決断したことを日々実行していくことこそが経営者に求められることだからです。

融資担当者と話をする際、自信がない態度や、曖昧な受け答え、後ろ向きな回答ばかりしていると、決断力や実行力に疑問をもたれます。

責任感も重視されるポイントです。
なぜなら、貸したお金を責任をもってしっかり返してくれなければ銀行は困ってしまうからです。

もし返してもらえなかったら、銀行は損失を被ることになりますし、融資担当者の評価にも関わります。

そんなことと思われるかもしれませんが、例えば、必要な資料を求められたら期限内にきちんと提出する。
アポイントの時間をしっかり守る、従業員や取引先の陰口を言わないなど細かな一つ一つの態度が大事です。

特に最近はSNS上で経営者が個人名で発信している姿をよく目にします。
多くの場合、実直で真面目な経営者の印象を与える発言ですが、まれに取引先の批判など、愚痴とも言える内容を発信しているのを見かけます。
融資担当者は意外とSNSをチェックしています。
ここまで見ていないだろうと思って好き放題発信していると、実はその内容を金融機関は事前に確認済み、評価の上でマイナスになっていることに注意が必要でしょう。

最後に、経営者の健康面はも重視されるポイントです。
経営者は会社を経営する唯一無二の存在なので、病気がちとまででなくとも深酒をよくする、ヘビースモーカーなどということが言葉や発信などから分ってしまえば良い印象は持たれないでしょう。


2.従業員の見定めるポイント

会社の人=経営者の分析が中心ですが、現場で働く従業員を見定めようとする融資担当者もいます。
実際の技術は従業員一人ひとりに宿るものですから、従業員は経営を行っていくうえでかけがえのない存在です。
それゆえ、従業員を失ってしまえば会社にとって大きな痛手になります。
そのため、従業員を見定めるポイントは、優秀な従業員が永く会社で働き続ける環境が整っているか、という部分を中心に分析をされます。

具体的には、従業員の定着率、平均年齢は分析されるポイントといえるでしょう。

従業員の定着率が悪い会社は、熟練の技術者が育成されない社内環境ともいえますから、会社が生き残っていくうえでの弱みと捉えられます。
融資担当者は、定着率が安定しない原因がどこにあるのかを見定めようとします。
その理由が経営者によるワンマン経営やパワハラ上司がいるということであれば、今後も従業員が育ちにくい社内環境と捉えられ、良い評価はされないこととなります。


また社員の年齢に偏りがあるような会社も注意して見られる傾向にあります。
例えば、高齢者が多い会社であれば、若手の従業員が育っていないため将来の会社の存続が危ぶまれます。
また若手が入ってきてもすぐに辞めるような職場環境でないかという疑義が生じます。
理想はまんべんなくいろいろな世代の従業員がいることです。

とはいえ、実際に従業員を見るためには銀行の担当者は会社を訪問しなければなりません。
そのため、従業員を見る機会は少ないですが、その銀行から新規に融資を受ける場合大口の融資の場合、銀行は慎重に会社の実態を判断しようとしますので、会社への訪問も視野に入れて融資の判断が進みます。

まとめ

いかがだったでしょうか。
会社の業績が良いというだけが融資実行の判断材料ではありません。

会社の業績を支えるのは従業員、そして何より経営者です。
そのため経営者の見定めは、融資実行の大きな判断材料といえます。


逆に言えば、少々業績が悪い場合でも、経営者に資質があると判断してもらうことができれば融資の可能性はあるということです。
銀行は人も見ている、ということを意識して日頃から行動しておくことが大事といえるでしょう。

横浜市緑区の女性税理士。 お金と利益をしっかり残す経営を サポートいたします。 銀行融資、経理、クラウド会計が得意。 税理士だけど、税理士らしくない。 親切丁寧なサポートを心掛けています。 お客様と一緒に成長していくことが私の想いです。 趣味は ・ランニング ・読書 ・料理 ・パン屋さんめぐり。