自己資本比率とは
「自己資本比率」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。
自己資本比率とは、総資本に占める純資産の割合です。
「総資本」は、貸借対照表の右側の負債・純資産を意味しています。
貸借対照表の右側(負債・純資産)と左側(総資産)は同じ金額でバランスしていますので、
左側の「総資産」を分母にすることもできます。
「純資産」は、貸借対照表の右下です。
資本金や利益剰余金がこれにあたります。
つまり、会社の資本のうち、会社自らの資本の割合を示すものです。
この「自己資本比率」、財務分析ではよく耳にする言葉です。
自己資本比率が高い会社=経営の安全度が高い会社とされるため、
多くの会社は自己資本の充実を財務政策上の最重点課題にします。
自己資本比率にこだりすぎなくて良いワケ
自己資本比率は高ければ高いほど良い言われますが、
実は、半分あたっていて、半分あたっていません。
半分あたっているというのは、
自己資本比率が0%、つまり債務超過の場合は問題です。
すぐに財務改善に取り組む必要があるといえます。
また、自己資本比率が0-10%未満も安心できません。
金融機関が行う企業の格付け上は警戒水準となります。
一方で、自己資本比率を上げることだけにこだわると経営が苦しくなることがあります。
その理由3つを順番に説明します。
①資金繰りが悪化する
自己資本比率は他人資本が多ければ多いほど低くなります。
つまり、借入金の額が多くなれば低くなります。
A社とB社の2つの会社があるとします。
A社は、現金100万円、借入金70万円、純資産30万円の会社です。
自己資本比率は、30%の高水準です。
B社は、現金300万円、借入金255万円、純資産45万円の会社です。
自己資本比率は、15%の普通水準です。
自己資本比率だけで比較すると、A社(30%)>B社(15%)。
A社の方が安全性が高いといえます。
しかし、本当にそうでしょうか?
仮にA社の月の売上が100万円の場合、
A社は1か月分の売上に相当する現金しか持っていないということになります。
売上の入金が少しでも遅れたり、仕入れが先行する業種であれば、
資金繰りが一気に困難になる可能性があります。
一方、B社の場合。
同じく月の売上が100万円だとすると、
現金300万円は、月商の3倍の現金を確保できている状態です。
売上げの入金遅延にも対応できる余力があり、仕入金額の確保もできます。
つまり、大事なのは、率ではなく額で考えることです。
いくら自己資本比率が高くても、現金の額が少ない会社は安全とは言えないのです。
②銀行融資の際に不利になることはない
債務超過や自己資本比率が10%未満であれば別ですが、
そうでない場合は
自己資本比率が低いからと言う理由で融資を断られることはないでしょう。
なぜなら、融資を行うことが銀行の利益にもなるからです。
銀行が融資を行うと、会社にとっては負債が増えます。
負債が増えると会社の自己資本比率は下がってしまいます。
つまり、銀行側からすれば融資を行うことで利益になる一方、
融資先の会社の自己資本比率を低下させ決算書をいためてしまうワケです。
そんなことは銀行側も承知なわけでして。
融資先の自己資本比率を下げるから融資をしないという銀行はまずないでしょう。
そうしていては銀行は利益が得られなくなります。
融資の際に銀行は決算書を必ず確認します。
自己資本比率は決算書で簡単に確認できますから、
銀行は会社の自己資本比率は頭に入っています。
その上で融資を行うのですから、
自己資本比率を上げることに躍起になることはないということです。
③保守的な経営になる
自己資本比率にこだわり過ぎると、保守的な経営になってしまいます。
なぜかというと、自己資本比率を上げるために
そもそも融資を行わない、融資残高を少なくするという考えになってしまうからです。
そうすると、資本金による資金調達など、
中小零細企業にとっては実現可能性の低い資金調達の手段しか残っていません。
資本金の調達が難しければ、
過去から積み上げてきた利益で事業を運営していくしかないのですが、
利益の厚みが少なければ、新しい事業への投資も困難です。
結果、保守的な経営になってしまい、
目の前のチャンスに投資することができず
事業が縮小したり経営難になってしまう可能性が高まります。
持つべきは現金・預金
このように、自己資本比率にこだわりすぎることによるデメリットは非常に大きいです。
自己資本比率も大事ですが、
現金を確保しておくという視点を見落としてはならないのです。
まずは、月の売上の3か月分の現金・預金の確保ができれば
経営の安全性は高いといえるでしょう。
自己資本比率にとらわれすぎず、
現金・預金を多く持つ会社を目指しましょう!