インボイス登録状況

2023年1月末時点でのインボイス制度の登録状況は、
登録完了事業者数が約220万件、登録申請中も含めると約250万件、全事業者の5割超が登録申請を終えているようです。

また、法人の登録状況は8割を超えているようですが、個人事業主の登録状況は3割程度の状況のようです。

2023年10月1日の制度開始に合わせてインボイス登録を行う場合、
原則の登録期限は2023年3月31日ですが、実質的には2023年9月30日まで延長となりました。

制度開始までまだ期間はありますし、様々な追加措置の公表が相次ぎ、様子見という方もいらっしゃるでしょう。

登録申請書にかかる処理期間は、現段階では電子申請の場合は約3週間、紙で申請した場合は約2か月かかるようです。
逆算すると、電子申請の場合は2023年8月末まで、紙で申請の場合は2023年7月末までには自分の会社のインボイスのポジションを決める必要があると言えます。

インボイスとは

そもそもインボイスとは、適格請求書のことを言います。

適格請求書とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

2023年10月からはじまるインボイス制度開始後は、
買手が仕入税額控除(※)の適用を受けるためには、取引相手(売手)であるインボイス発行事業者から交付を受けたインボイスの保存が必要となります。

仕入税額控除とは、
 消費税額の納付額の計算において、売上にかかる預かり消費税から、仕入・経費にかかる支払消費税を控除する仕組みのこと。

例えば、売上が110円。仕入・経費が88円の場合。
売上にかかる消費税は10円、仕入・経費に係る消費税は8円ですから、
消費税額の計算は、10円△8円=2円となり、事業者は2円を納税することになります。
この8円の控除のことを仕入税額控除と呼びます。

インボイス制度開始後は、買手は仕入税額控除を行うためにインボイスの保存が必要ということになりますから、
売手がインボイス登録をしなければ、その売手から発行される請求書にはインボイス登録番号が記載されず、

インボイスの保存は不可能です。
したがって、買手において消費税の計算上、支払った消費税相当額を控除できないということです。

当然買手は消費税の納税を少しでも少なく抑えたいわけですから、インボイス登録を行った売手と取引を行いたいと考えます。

一方消費税制度には、小規模事業者は消費税を納めなくてよいという特例がありますので、そのような事業者に該当する売手はこれまで消費税を納めないというポジションを取っていました。

しかし、2023年10月以降は消費税を納めないポジションを継続するのであれば、買手側で仕入税額控除ができなくなるため、消費税相当額の価格交渉(=売上代金の値下げ協議)の可能性がでてきます。

インボイス登録は任意ですが、自分の会社におけるインボイス登録のメリット・デメリットを考えたうえで、登録を行うか否かの判断をすることが大事だといえます。

インボイス登録後の消費税の計算は4択

インボイス制度開始後、これまで消費税を納めていなかった小規模な事業者の方がとりうるポジションとして考えられ得るのは、以下の4つです。
①本則課税
②簡易課税
③2割納付
④消費税の納付なし


それぞれ選択した時の消費税額と手取りの試算をしてみます。

【前提】
・その年の売上が550万円、仕入・経費が220万円(全て消費税がかかる取引である)。
・エンジニア業

【試算】
①本則課税
 消費税額:50万円(売上にかかる預かり消費税)△20万円(仕入・経費に係る支払消費税)=30万円
 手取り額:550万円(売上)△220万円(仕入・経費)△30万円(消費税納付額)=300万円

②簡易課税
 消費税額:50万円(売上にかかる預かり消費税)△25万円(仕入・経費に係る支払消費税)=25万円
 手取り額:550万円(売上)△220万円(仕入・経費)△25万円(消費税納付額)=305万円
 ※簡易課税の場合、エンジニア業は売上にかかる預かり消費税の半分を仕入税額控除します。

③2割納付
 消費税額:50万円(売上にかかる預かり消費税)△40万円(仕入・経費に係る支払消費税)=10万円
 手取り額:550万円(売上)△220万円(仕入・経費)△10万円(消費税納付額)=320万円 
 ※2割納付の場合、売上にかかる預かり消費税の8割を仕入税額控除します。

④消費税の納付なし
 消費税額:0円
 手取り額:500万円(売上)△220万円(仕入・経費)=280万円
 ※消費税の納付なし=インボイス登録事業者にならない場合、買手との価格交渉により消費税相当分を売上価額から減額される可能性があります。(売上550万円→消費税相当50万円減額により500万円) 

この会社の場合手取り額の観点では、
③2割納付(320万円)>②簡易課税(305万円)>①本則課税(300万円)>④消費税の納付なし(280万円)
の順番で有利となります。

ただし、業種や過去の売上、将来の見通しなど、個々の会社の事情によって有利な選択は異なります。
一度選択したら2年は変えられないなどの選択の縛りも発生しますので、注意が必要です。

まとめ

インボイス制度開始を見据え、2023年8月頃までに自分の会社のポジションを決める必要があります。
インボイス制度の登録は任意ですので、まずは制度の概要を知ったうえで、どの選択が自分の会社にとってもっとも有利なのかを検討することが大事です。

個人事業主の方にとっては、ちょうど今が2022年分の確定申告の時期です。
2022年の決算数値が確定したタイミングで、その状況を踏まえながらインボイスのポジションを検討してみてはいかがでしょうか。
どの制度が使えて、どれを選択すれば良いか分からないという方は一度税理士に聞いてみるもの良いと考えます。
弊社でも受け付けていますので、お問合せからご連絡ください(^^)/

横浜市緑区の女性税理士。 お金と利益をしっかり残す経営を サポートいたします。 銀行融資、経理、クラウド会計が得意。 税理士だけど、税理士らしくない。 親切丁寧なサポートを心掛けています。 お客様と一緒に成長していくことが私の想いです。 趣味は ・ランニング ・読書 ・料理 ・パン屋さんめぐり。