融資の時に支払う信用保証料

信用保証とは、会社が融資の返済ができなくなってしまった場合に、信用保証協会が会社に代わって金融機関に返済を行うことです。
利用する保証制度により保証割合は異なりますが、融資残高の80%や100%を信用保証協会は負担します。

この信用保証を行ってもらうために、会社は信用保証協会に信用保証料(以下、保証料)を支払います。

なお、信用保証協会が返済の肩代わりをしてくれたからと言って、会社が返済をしなくても良くなるというわけではありません。返済を肩代わりしてくれた信用保証協会に会社は返済をしなければなりません。

会社が信用保証料を支払った時の経理処理のポイントは3つです!

   ・保証料は経費、期間対応を行う
   ・勘定科目は「支払保証料」
   ・消費税は非課税

それでは、順番に説明して参ります!

保証料は経費、期間対応を行う

保証料は融資を受けるうえで必要な支払といえるので、経費計上ができます。

経費計上するうえで使う勘定科目は、「支払保証料」、「支払手数料」、「支払利息」が多いです。
勘定科目は絶対コレ!という決まりはありませんので、会社の実情に合わせて使って大丈夫ですが、私は「支払保証料」をおすすめします。(理由は後ほど)


例えば、保証期間が1年の保証付き融資を受けた場合の仕訳は次のようになります。

1.保証料支払時(保証期間が当期中の場合


ただし、保証期間が翌期にまたがる場合は、次の通りです。

2.保証料支払時(保証期間が翌期にまたがる場合)

なぜ、前払費用が必要かというと、会計・税金に「期間対応」という考え方があるからです。

たとえば、2023年3月が決算期(事業年度:2022年4月~2023年3月)の会社が、
2023年2月に保証期間1年の融資を受け、保証料12万円を一括で支払った場合を考えてみます。

会社が信用保証を受ける期間は2023年2月から2024年1月までの12か月ですから、
支払った保証料も同じ2023年2月から2024年1月に均等に経費にしなければならないと考えます。

保証料12万円は次のように分けて経費にします。

2023年3月決算期で計上できる経費
 12万円×2か月(※1)÷12か月=2万円
 ※1 2023年2月、2023年3月分

2024年3月決算期で計上できる経費
 12万円×10か月(※2)÷12か月=10万円
 ※2 2023年4月~2024年1月

これを期間対応と言います。

勘定科目は「支払保証料」

先ほど、勘定科目は会社の実情に合わせて使って大丈夫と書きました。
私見ではその中でも「支払保証料」を使うことをおすすめします。
その理由は2つです。


1.営業利益に影響がない勘定科目だから

 「支払保証料」決算書上は損益計算書(PL)の営業外費用に表示を行います。
 損益計算書の各利益の建付けは次のようになっています。



お分かりの通り「支払保証料」は営業外費用の項目に記載されることになるので、
営業利益を構成しない勘定科目ということになります。

営業利益を構成しない勘定科目にすることの何が良いかというと、
融資審査の際のポイントとなる営業利益(=本業での稼ぐ力)にマイナスの影響を与えないということです。

融資の審査の際には、営業利益は必ずチェックされる部分です。
営業利益が赤字になっていたら、本業に稼ぐ力がないと判断され評価は下がります。


その点、「支払保証料」の勘定科目で営業外費用に表示させることで、
経常利益には影響が出ますが、経常利益は本業以外の取引も含めた利益ですから、融資審査の場合も、本業の評価には影響させないことができるというわけです。

もし「支払保証料」でなく営業利益に影響のある「支払手数料」などの勘定科目を使って、
仕訳登録した場合はどうなるでしょうか。
その会社の営業利益は「支払手数料」に計上した保証料の金額分押し下げられるということになります。


2.保証料だけを明確に分けることができるから

「支払保証料」を融資の際の保証料の支払のときだけに使う勘定科目としておくことで、
その融資が
・保証協会付きの融資かどうか
・保証料率は何パーセントだっかた
・紐づきの融資額を確認することで、保証料の枠をどのくらい使っているか
をすぐに把握することができます。


もし仮に「支払手数料」などの他の取引も含まれる勘定科目で処理してしまうと、
保証料を確認するためには、総勘定元帳や仕訳帳を検索しなければならず、手間が増えます。

期中の取引ならまだしも、前期以前の総勘定元帳や仕訳帳を調べるのは非常に手間です。

保証料の支払時のみに使う勘定科目を「支払保証料」と決めておけば、
過去の取引であっても決算書上の「支払保証料」という勘定科目の金額を確認するだけで済みますから、
かかる時間はぐっと減らすことができます。

会社が融資審査をスムーズに進めていくうえで、過去の融資状況の確認は必要になりますので、後々のことを考えて分かりやすく確認できるようにしておくというのは有効です。

消費税は非課税

保証料の消費税は「非課税」です。
これは、信用の保証が「消費」という考え方になじまないため、課税されることが適当でないという考え方のためです。

仕訳登録する際、消費税を納める課税事業者の場合は、消費税の課税区分の入力が必要ですね。
その際に、「非課税仕入」を選ぶようにしましょう。

ただし、実務的には課税区分を「不課税仕入」または「対象外」を選んでも消費税の計算上影響がないので問題ありません。
「不課税仕入」、「対象外」とは、消費税がそもそもかからない取引のことです。

使用する会計ソフトにもよりますが、「不課税仕入」や「対象外」は勘定科目の初期値でセットされていたり、ドロップダウンリストの上部に出てきて選びやすいことが多いです。

少しでも会計登録にかける時間を少なくしたいのであれば、「非課税仕入」よりむしろ「不課税仕入」「対象外」で登録した方が効率的といえるでしょう。

余談:保証料が戻ってきたら

もし繰り上げ返済を行うなどして保証料が戻ってきたら、以下の仕訳を行います。

保証を予定していた期間部分の返還という考え方のため、消費税は不課税となります。
なお、支払ったときに非課税仕入だからといって、返還を受けた際に非課税売上としないように注意が必要です。

また、雑収入は損益計算書上の営業外収益に一括で計上します。
実際に返還が行われているため、この場合は期間対応という考え方は行いません。

横浜市緑区の女性税理士。 お金と利益をしっかり残す経営を サポートいたします。 銀行融資、経理、クラウド会計が得意。 税理士だけど、税理士らしくない。 親切丁寧なサポートを心掛けています。 お客様と一緒に成長していくことが私の想いです。 趣味は ・ランニング ・読書 ・料理 ・パン屋さんめぐり。