多くの人にとって、初めての銀行融資は「住宅ローン」ではないでしょうか。
「融資=借金=悪」と考えられがちな理由の一つに、
多くの人になじみのある住宅ローンと事業の融資が同じ「借金」という
カテゴリに分類されてしまうからだと思います。
しかし、住宅ローンと事業上の融資は別物と私は考えています。
同じ借入でも理由が違う
住宅ローンと事業上の融資は別物と考える理由は、ズバリ借入理由が異なるからです。
住宅ローンは、言うまでもなく銀行から借り入れたお金で自宅を買い、
長い年月でお金を返していく、というものです。
結婚や家族が増えるタイミングで自宅を購入し、
その後働き盛りの期間で返済をしていくのが一般的なイメージです。
自分や家族が将来にわたって安心して生活する自宅を買うための資金ということですね。
住宅ローンの場合、基本的には融資は1回のみで自宅購入に必要な全額を借入れます。
追加で借入れることはありません。
当然ですが、追加融資を見越して、
銀行に定期的に個人の財産状況や近況を報告する必要はないということですね。
最初に借り入れた住宅ローンを毎月滞りなく返済していれば良いわけです。
銀行は借入する本人の年収や財産状況に照らして返済可能な範囲で貸出額を設定しますし、
万が一に備えて団体信用生命保険にも加入します。
銀行にとっては貸し倒れ懸念が少ない融資ということができるのではないでしょうか。
一方、事業上の融資(以下「事業融資」)はどうでしょうか?
事業融資の場合、追加融資はありえます。
というより、追加融資を前提に借入を行うといっても良いでしょう。
なぜなら、事業を成長させるときにはお金が必要だからです。
融資→事業投資する→売上→回収
この循環をだんだん大きくしていくことで事業は成長します。
事業を大きくしようとすれば、最初の「融資」の部分で必要となるお金も多くなります。
1つの金融機関での与信枠は限られますので、
複数の金融機関との付き合う場合もでてきますし、借入額も多くなります。
銀行は貸し倒れリスクのある会社には貸付をためらいます。
事業融資の場合は追加の借入があるからこそ、
毎月滞りなく返済すること以外に、しっかり利益を残すことが重要になります。
つまり、個人の自宅を購入するための住宅ローンと事業を成長させるための事業融資は
借入目的の違いゆえ全く別物と言えるのではないでしょうか。
住宅ローンの繰り上げ返済はアリ
では、追加借入がない住宅ローンの繰り上げ返済はどうでしょうか?
事業融資の場合は、なるべく繰り上げ返済はしない方が良いでしょう。
まず第一に、会社のお金がその分減ります。
さらに、銀行は当初の返済計画にそった利息収入を見込んでいます。
繰り上げ返済をされてしまうと、利息収入がなくなってしまうわけですから困ります。
良かれと思って繰り上げ返済をしてみても、実は銀行の評価は真逆なのです。
次回の融資も繰り上げ返済されてしまうのではないか、
とためらいが生じ貸付けに慎重になります。
しかし、住宅ローンの場合は話が別でしょう。
2回目以降の融資を想定しない住宅ローンの場合は繰り上げ返済はアリです。
追加融資がないのですから、銀行からの評価を気にする必要がないからです。
生活に負担がない範囲で繰り上げ返済を行い、その分利息支払いを減らすことができれば
将来にわたって家計に余裕が生まれます。
住宅ローン控除はどう考える?
住宅ローンを組むと、その年から住宅ローン控除が使えます。
(厳密には、返済期間や自宅・所得の状況などにより使えない場合もあります)
【国税庁:住宅借入金等特別控除】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-1.htm
例えば、借入期間30年で3,000万円(固定金利1.8%)の住宅ローンを組み、
その住宅に令和4年中に住み始めた場合。
令和4年分の住宅ローン控除は、3,000万円×0.7%(控除率)=21万円です。
つまり、21万円が年末調整や確定申告のタイミングで還付されるということです。
(所得税が21万円未満の場合は住民税額から控除されます)
では、令和5年の場合はどうでしょうか。
返済が100万円進んで、住宅ローン残高は2,900万円としましょう。
住宅ローン控除は、2,900万円×0.7%(控除率)=20.3万円です。
一方、繰り上げ返済を行った場合でどうでしょうか。
借入から1年後の令和5年12月に100万円を繰り上げ返済した場合、
将来にわたり支払う利息が約65万円少なくて済む試算となります。
これは家計にとっては大きい金額ではないでしょうか。
ただ、事業融資ではNGの繰り上げ返済でも、住宅ローンの場合は有効ということは言えますが、
繰り上げ返済をするかしないかに正解はありません。
少しでも損をしたくないのであれば、住宅ローン控除率が金利を下回るのであれば
繰り上げ返済を進めれば良いと思います。
一方、住宅ローン控除の期間は決まっていますので(令和4年に住み始めた場合は13年間)、
住宅ローン控除が使える期間は繰り上げ返済を行わないというのも考え方です。
ご自身の状況などに合わせて考えられるのが一番良いでしょう。
所感
本日は住宅ローンについて記載しました。
住宅ローン控除による還付額は大きいですが、税制上の住宅ローン控除率は縮小傾向にあります。
一方、金利は上昇傾向にあり、
住宅ローン控除を早く返した方がトータルで考えるとお得な場合が多いでしょう。
個人的には、住宅ローン控除の適用期間が切れるのを待たず、
少額ずつでも繰り上げ返済を行うのも大いに有効だと思います。
ただ、私自身も初めて繰り上げ返済をしたのは借入から10年後でした。
生活との兼ね合いというところは大きいです(^^;)
いずれにせよ、住宅ローンを組む際に
繰り上げ返済も見越して手数料が少ない銀行を選ぶというのがおすすめです。