お金儲け以外の視点がなくて良いのか?
先日とある本を読んでいて、その中の一文に違和感を感じました。
「儲ける会社がやっていること」と題して、
業務委託契約・フランチャイズ契約が紹介されていまいた。
要約すると以下です。
・独立意欲の高い優秀な社員を引き留める解決策の1つとして、
業務委託契約にして人材を確保する。
・会社側は事業のリスクをかぶらず、業務委託先に運営リスクを取らせることができる。
・売上は会社側に入金させる仕組みにして、諸経費やロイヤリティを差引いて業務委託先に支払う。
そうすれば、会社は売上の回収リスクがなく、利益の確保できる。
・社員が独立する前に会社は出店の投資を回収しておく。
独立後の3年で、さらにもう1回転投資を回収する。
(ロイヤリティで回収するということだと思います)
最終的には投資額に近い金額で業務委託先に店舗を買い取ってもらう。
これで投資の3回分の回収ができる。
・最後の方にちょろっと、のちのち問題が発生してしまわないよう
win-winの関係を心掛けた方が良いと書かれています。
・・・(違和感)。
この文章を読んで感じた違和感は、
会社の利益優先で、社員の利益に対する思考が全く感じられないことでした。
会社にとっては、リスクが少なく高い収益率が望める良いビジネスモデルだと思います。
でも社員にとってはデメリットばかりに感じてしまいます。
社員自身は優秀な才能を生かして独立しようとしたところ、
会社に引き留められ、業務委託契約という形式上の「独立」をさせられる。
実態は、店舗の運営リスクも背負っているのにうえに、
会社経由での売上の入金にされ、ロイヤリティと言う名目で会社への上納金を支払う訳です。
もちろん、会社の知名度が高ければ、そのブランド力を生かして営業することができますが、
優秀な社員ということであれば、ある程度の営業力もあるでしょう。
独立を志す社員にとってのメリットはわずかと言わざるをえません。
このような形態で長期間続ければ、
業務委託先の社員は心身ともに疲弊するだろうなと感じるわけです。
そんなお人好しの社員さんが本当にこの世にいるの?
と思いますが、会計業界で働いていると明らかにこれは・・と該当するパターンは見てきました。
(飲食店や美容業界など)
win-win? ほんとうに?
昔勤めていた会計事務所で関与させていただいた飲食店オーナー(Aさんとします)のお話です。
Aさんはフランチャイズで独立し、個人事業主としてチェーン店を営んでいました。
毎月の売上げは、本社に入金され、
そこから本社が指定する仕入先の材料費、本社へのロイヤリティ、その他いろいろな名目で
本社の取り分が差し引かれ、Aさんのもとに翌月入金される仕組みでした。
フランチャイズである以上、売上が丸々Aさんに入金されるわけでないにしろ
本社の取り分がえげつないことになっていました。
顔の見えない本社の人たち、現場で休みなく働くAさん。
Aさんのお人柄は本当に優しく頑張り屋な方でした。
ご家族(奥様、育ち盛りのお子様)がいらっしゃったのですが、
ほぼ自宅に帰ることなく、会社で寝泊まりをされていました。
(といっても飲食店の休憩所にある椅子で寝ていました)
見かねた奥様も忙しいAさんを手伝う形で一緒に店舗に立たれていましたが、
本当にお2人とも忙しそうでした。
Aさんにとっても本社にとっても、win-winの関係でしょうか?
さらに言えば、Aさんの奥様、お子様にとってもそうでしょうか?
私ができること
いったんこのようなビジネスモデルではじめてしまうと、
なかなか抜け出すことができないのだと思います。(契約上も資金上も時間的にも)
私は、フランチャイズでの独立を絶対に反対しているわけではありません。
フランチャイズのメリット(ブランド力を生かせる)もあり、
それを生かして独立されたいという方の想いは応援すべきだと思います。
会計事務所で働く私が応援できることは、
独立後も継続して、ご本にや家族が心身ともに安心して生活していけるよう
財務支援(お金をしっかり残す経営のご支援)、経営支援(利益をしっかり残す)だと思います。
お金も利益もカツカツの状態で事業をしていれば、
本社の言いなりにならざるをえません。
お金に余裕があれば、本社に依存しない経営への転換も可能です。
フランチャイズ契約を解除して、
これまでの経験を活かし自店舗出店で独立することも可能でしょう。
また、契約を解除しないまでも、追加人員を確保し、
Aさんの心身ともに休まる時間の確保も可能です。
ご家族との時間も確保できるでしょうし、会社のこれからの事を考える余裕も生まれます。
余裕をもった経営には、利益と資金の確保が必要ですが、
先のAさんの場合、日々の店舗経営が精一杯でそこまで考える余裕はないでしょう。
融資による資金調達を行い、お金を確保したうえで、
戦略的に立て直す方法を検討すべきではないかと考えます。