本日は電子帳簿保存法のお話です。
そのなかでも電子取引についてのおハナシです。
横文字がたくさん。改正もいろいろの電子帳簿保存法。
ですが、実は思っているほど難しくないのです。
当初はいろいろ難しいものでしたが、その後は少し難しい→これならやってみよう!と思えるところまで改正されました。
何かをはじめようとするときは、最初はなんでもアレルギーがあったり、時間がかかったりします。
電子帳簿保存法も然りではありますが、ハードルが下がった今がチャンスです。
電子帳簿保存法を活用できれば効率化も進むことでしょう。
しばしブログにお付き合いいただけるとうれしいです(^^)
電子取引の位置付け
電子取引は、電子帳簿保存法の中心的な規定の1つです。
電子帳簿保存法は主に、
①国税関係帳簿(仕訳帳、元帳など)、②国税関係書類(注文書、契約書など)③電子取引
この3つの保存に関する規定を定めています。
ちなみに、電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿書類のデータ保存を認める法令です。
正直、規定や名前を覚える必要はありません(^^;;
一応、位置付けに軽くふれておいたほうがわかりやすいかなという考えで記載しております。
電子取引とは?その範囲は?
電子取引とは、取引情報のやりとりをデータにより行う取引のことです。
ポイントは「取引情報」とは何か、「データにより行う取引」の範囲をおさえておけばOKです!
「取引情報」とは何か
取引に関連してやりとりをする注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。
〇〇書という名の定型文書以外にも、それらに記載される事項も含まれますので、〇〇書と呼ばれるものだけ残しておておけば大丈夫とはなりませんのでご注意ください。
「データにより行う取引」の範囲
以下、具体例をご覧いただいた方がピン!ときます。
メール…メールの本文に記載された請求書や領収書のデータ
添付ファイル…メールの添付ファイルで受領した請求書や領収書
インターネット…インターネットのサイトからダウンロードする請求書や領収書
クラウドサービス…クラウドサービスを利用して授受する請求書や領収書
カード・スマホアプリ…クレジットカードやICカード、スマホアプリなどからクラウドサービス等により受領する請求書や領収書
EDIシステム…EDIシステムを使ってやり取りする受発注データ
ペーパーレスFAX…ペーパーレスFAX機能があるコピー機を利用したFAXデータ
DVD…DVDなどの記録媒体を介して授受した請求書や領収書
データで行うやりとりは結構多いものですね。
データを漏れなく集めること!を意識していただければと思います。
保存形式の決まりはありませんので、画面キャプチャやスクショでもOKです。
保存期間・保存場所
保存期間は、確定申告書の提出期限の翌日より原則7年です。
法人で欠損金が生じている事業年度では10年となります。
保存場所は、事業者の納税地または事業所や事務所でOKです。
上記の場所以外にあるクラウドサービスやサーバに電子取引を保存している場合でも、インターネット接続などで確認することができれば問題ありません。
また、取引先ごとに異なるシステムを使っているなどの理由により、保存場所が複数に分かれていても問題ありません。
保存要件
電子取引の保存要件は以下の通りです。
「真実性」と「可視性」それぞれの要件を満たす必要があります。

「真実性」の要件
表の①~④のうちいずれか1つを満たせばOKです。
おすすめは④の事務処理規定の作成です(^^)
なぜなら、簡単でお金もかからないからです。
④以外はシステム導入が必要だったり、運用上で漏れが生じる可能性があります。
ちなみに、事務処理規定は国税庁でひな型が公表されていますのでこれを使えば大丈夫です。
(「電子取引に関するもの」→「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」)
「可視性」の要件
可視性の要件は、表の⑤~⑦すべてを満たす必要があります。
ただ、⑤は電子取引のデータをディスプレイ等できれいに出力できるに整えておけばOKですし、
⑥もシステムのマニュアルを備え付けておけば大丈夫です。
したがって最もハードルが高いのは「検索機能の確保」です。
検索機能の確保は以下3つの要件を満たす必要があります。

2.3.は、※印の対応にすれば良いでしょう。
したがって、1.のみを満たすことを目指しましょう。
1.を満たすには、具体的に以下の方法があります。
・Excelで検索簿を作成する
検索簿の作成例は国税庁のHPで公表されています。
(「電子取引に関するもの」→「検索簿お作成例」)
・ファイル名を検索できる内容にする
例えば「20230327_㈱A商事_33000」(取引年月日_取引先_取引金額)とすれば大丈夫です。
消費税との関係
電子取引の保存は、消費税の課税事業者においても電子帳簿保存法上の保存要件に準じて保存する必要があります。
ただ、今時点の消費税法では請求書の保存が困難な場合、帳簿の保存だけで仕入税額控除することができる例外規定があります。電子取引に該当する場合は、この例外の規定が適用されますので、現時点では電子取引の保存要件を満たしていないという理由だけで、仕入税額控除が認められないなどの不都合は生じないと考えられます。
しかし、2023年10月にインボイス制度が開始した後は、例外規定は廃止されることとなっています。
したがって、今後は消費税法においても電子取引の保存要件に従って保存することが求められることとなります。
ちなみに、消費税法では、電子取引を紙に出力して保存することも認められていますので、
仕入税額控除(消費税の計算において、売上に係る消費税から支払に係る消費税を差引くこと)の要件上は紙保存でも問題はありません。
ただ、紙での保存が認められるのはあくまで消費税法のお話ですから、電子帳簿保存法を合わせて考えると、電子データでの保存が追加で必要になります。
そうすると、紙+電子データの二重保存が必要となり、かえって面倒なことに。。
ですので、電子データの保存のみとすることがすっきりとして良さそうです。
宥恕措置の恒久化をどうとらえるか?
電子取引の保存は現在宥恕措置の最中です。
当初、令和4年1月日以後に行われた取引は全て電子取引での保存が義務付けられることとなっていました。
しかし、対応が未完了な事業者がたくさんいることや認知が進んでいないなどの理由により、宥恕措置が出されることとなりました。
この宥恕措置の内容は以下の通りです。
「やむを得ない事情がある場合」かつ「ダウンロードの求め・出力書面の提示又は提出に応じられる場合」の2つを条件に、令和5年12月31日までの2年間は電子取引を紙に出力して保存することが認められるというものです。
簡単にいうと、今まで通り紙での保存も認めるよ、ということです。
さらに、令和5年の税制改正ではこの宥恕措置が恒久化する改正が盛り込まれました。
つまり、2つの条件が認められればずっと紙OKです(^^;)
なお、詳細は6月ごろに分かる見込みです。
あんなに頑張って勉強や準備をしてきたのに(涙)と感じられた方もいらっしゃったかもしれません。
ただ、電子取引に対応するための準備や勉強は決して無駄ではないと思うのです。
なぜなら、電子帳簿保存はデジタル化の取り組みのひとつです。
そして社会のデジタル化は止まりませんし、その波に乗らない場合の不都合は今後さらに増していくと思うのです。
もちろん、全てデジタルでなくても良いと思います。
デジタル化についていくという方向性で少しずつデジタル化に対応すれば、少しずつ煩わしい業務から解放される可能性は非常に高いと考えています。
ずっと紙で印刷して保存するの、面倒ですしね。
今を変えていこうという意識が大事だと考えています。
余談ですが、ひとり仕事ならなおさら物理的な保管スペースも限られますし。
宥恕措置にかかわらず、電子取引の保存を進めていくことをおすすめいたします。
令和5年のその他の改正
令和5年の税制改正では、電子取引に関して、先に述べた宥恕措置の恒久化以外にも改正がありました。
特に、年間売上高5千万以下の方の検索要件が不要になったことは大きいものです。
具体的には、売上高5千万以下の方に関しては税務職員の求めに応じ、電子取引の情報を提示すれば、検索要件が不要となりました。
こちらの要件は当初、年間売上高が1千万以下のい事業者に限定されたものでしたが、5千万円までに引き上げられました。
つまり、先に述べた保存要件のうち「検索機能の確保」が不要になるということです。
保存要件のうち「検索機能の確保」のハードルが一番高いと考えられるので、この改正は大きいですね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
実務的には、①事務処理規定を作成し(真実性)、②ファイル名を検索できる内容にする(可視性)を整えた上で、実際に電子取引の保存をはじめてみるのが最も簡単なはじめ方といえそうです。
ぜひチャレンジしていただければと思います。
私も開始しています(^^)/