粉飾決算なんて自分には関係ない、
そう思われている方も多いのではないでしょうか。
上場企業の場合は監査が行われるので、まず難しいでしょう。
(ずさんな監査で事件になった例もありますが、それはおいておいて)
一方、中小企業は監査がありません。
万一粉飾決算を行っていたとしても、それが明るみにならない限りペナルティーを受けることはないのです。
だから、粉飾決算を行っているという意識はないけど、実は粉飾決算だったということもありえます。
自分が絶対粉飾に手を染めない!と思われている方がほとんどでしょう。
なのに、なぜ粉飾してしまうのか?
それは、粉飾して会社を良く見せる必要があるからです。
たとえば、金融機関からの融資を受けたい場合。
融資を受ける上では、黒字であることが重要です。
しかし、資金繰り悪化により黒字にならない場合、何とか黒字化しようと策を練ります。
そして、いつの間にか粉飾をしてしまっていた。
そんなつもりはなかったのに..の典型例です。
結果として粉飾決算をしていることに変わりはありません。
理由はどうであれ違法なことです。
そして、このような場合、金融機関も粉飾をすでに見抜いています。
まず融資を行いません。
適当に理由を付けて、しれっと門前払いされるケースがほとんどです。
粉飾を指摘して面倒なことに巻き込まれないためです。
粉飾により、会社の状態を本来よりよく見せているため、もし融資を行ってしまえば貸し倒れのリスクが高まります。
金融機関の融資担当者は決算書の分析スキルがありますから、粉飾決算は見抜かれると考えておいた方が良いです。
融資はまず無理な粉飾決算の例
1 在庫の水増し
在庫の水増しとは、実際にはない在庫を計上することです。
近しい言葉に「不良在庫」がありますが、不良在庫とは違います。
不良在庫は存在している在庫です。
存在しているものの、その価値が落ちてしまった在庫です。
価値が落ちた部分を決算書で損失にすることは合法です。
一方で、在庫の水増しの場合は実際にモノはありません。
仕組みは、在庫を水増しした分、売上原価を減らし利益を増やすことで粉飾を行う方法です。
この方法は粉飾決算の典型例です。
よって、融資担当者もそれを見抜く方法は当然知っています。
在庫の回転日数(在庫が何日間で入れ替わっているか)を長期的に見て増加していないかがチェックされます。
決算書を数期分横並びで見た際、特別な事情がない限り回転日数が大きく増える事は考えられません。
融資担当者に「在庫が増えた理由は?」と聞かれて、相手が納得する回答ができなかった場合。
粉飾が疑われるでしょう。
在庫が増え続けている期間ずっと粉飾をしているのではないかと疑念を持たれます。
2 架空売上
売上を過大に計上し利益を多く見せる方法です。
もっとも架空ですから、その売上代金が会社に入金される事はありません。
したがって、売掛金や受取手形などとして決算書上に残り続けることになります。
よって、売掛金や受取手形が決算期毎に増加しているようなケースで疑われます。
この方法も1の場合と同様に、典型的な粉飾決算の1つです。
3 繰越欠損金を使ったもの
こちらは税金の制度を利用したものです。
税金の計算上、過去の赤字を繰越できる制度があります。
例えば9年前に900万円の赤字を出している会社があるとします。
900万円の赤字は、それ以降の決算期で生じた黒字と相殺することが可能です。
よって、900万円以内の黒字であれば相殺され利益はゼロです。
そのため、納税もほぼありません。
決算書上では黒字となり、一方で税金はほぼ払わないというものです。
ちなみに、この赤字の繰越は10年間認められています。
よって過去10年内の一時期に大きな損失を出していて、その後はその赤字の範囲内で黒字を出し、納税はしていない。
このような会社は粉飾が疑われやすいといえます。
膿は早く出そう!
もし、本日紹介したようなものをやろうとしているのなら、一旦立ち止まって考え直して下さい。
なぜなら、粉飾は一度やってしまうと、それを解消するのは非常に困難を極めるからです。
またどんどん行き過ぎてしまって、取り返しがつかないことにもなります。
では、すでに粉飾をしてしまっている場合どのようにすれば良いのでしょうか。
その場合は早急に税理士に相談してみて下さい。
銀行に正直に話すとおっしゃる社長さんもいるかもしれません。
でもいったん冷静になった方がよいです。
先ほどもお伝えした通り、銀行は既に見抜いているケースもあります。
わざわざ自分から正直に話したところで、助けてくれるとは限らないでしょう。
融資を引き揚げられるなど、さらにマイナスの対応を取られる可能性の方が高いです。
粉飾によるうま味を得た分、それを修正するためのリカバリーは、数倍の痛手を伴うと考えた方が良いでしょう。
決算書も悪くなりますし、本来負担しなくてよい税金の負担も生じます。
まずは状況を正しく把握したうえで、どのように手を打つのか、しっかり考えていく必要があります。
まとめ
会社を成長させたい思いが行き過ぎてしまって、本来違法なことに気づかなくなる。
お気持ちが分からなくはないです。
でも、長い目でみると粉飾決算には1点の良いこともありません。
そういう時に止めてくれる存在いること、
日頃から相談できる相手がいることが理想です。
その役割はご家族などでも良いでしょう。
税理士もまたその役割を担える1人だと思います。
私自身もそのような役割が担えるよう日々精進が必要だということです(^^)