税理士事務所が複数のお客様の年末調整のチェックを行う場合に、最も意識するのがスケジュール管理ではないでしょうか。
12月支給の給与で年末調整を行うお客様が多くなるため、11月下旬から12月末までの短期間で多くのお客様のチェックを滞りなく実施する必要があります。
年末調整以外の業務も並行して行う必要があるので、なるべく先手先手で準備を行うと安心です。
年末調整のチェックが遅くなると、1月以降の源泉所得税の特例納付や法定調書の提出等にも遅れが生じます。
個人事業主の確定申告にまで影響を及ぼすといっても過言ではありません。
来年以降の指標になるように私が今年の年末調整に向けて行った準備をまとめてみます。
準備したこと
年末調整の対象となるお客様の洗い出し・確認(9月中)
年末調整のチェックを請け負うお客様が多い場合、お客様ごとの概要を一覧表にしておくと分かりやすいです。
一覧表には以下の事項を記載しています。
対象従業員の有無、窓口となる方、年末調整の実施時期(12月or1月)、納期特例の対象か否か、年末調整の使用ソフト、給与支払報告書の提出方法、法定調書の提出方法などです。
以前から年末調整業務を請け負っているお客様の場合は、振り返りも兼ねて一覧表を埋めることは容易です。
一方、今年中に関与が始まったお客様や従業員を雇い始めたお客様は不明のため、この段階で一覧表を完成させることはできません。
お客様とのミーティングで確認する必要があります。
MFの年末調整研修を受講、freeeはマニュアル確認(10月初旬)
今年は10月初旬にMFが提供するクラウド年末調整のオンライン研修がありました。
研修があるのを知ったのは9月初旬頃だったように記憶していますが、その時点で申込数に達し締切になっていました。
ただ、研修終了後すぐにオンデマンド受講が可能だったため、実際のオンライン研修の翌日にオンデマンド受講をしました。
この時に2022年の年末調整の改正を初めてしっかり把握することになりました。
2022年は改正がほぼなかったから良かったものの、来年は割と多い印象です。
来年は改正点の把握を早めに行い、改正に対応するためのソフトの仕様確認までを先に行っておこうと思いました。
また、今年に限りですがMF社の料金体系が変更になっていたので、お客様に追加のお支払をしていただかないと年末調整の画面すら確認できない状況でした。こういった面でも、実際の利用を想定した事前確認をおこなっておけば安心だなと感じました。
なお、freeeはその時点では年末調整に向けた研修動画が無かったため、マニュアルで年末調整の流れを再確認しました。
チェックリスト作成(10月)
実際のチェックを想定してチェックリストを作成しました。
オンライン上で同時編集可能なようにスプレッドシートで作成しています。
縦軸に従業員の方のお名前を、横軸には回収すべき資料(扶養控除等申告書、保険料控除等申告書、マイナンバーなど)を記載したものです。
どのお客様でも使えるようなひな型の位置付けで作成し、お客様ごとの特異事項があれば加工していただくようにしています。
「利用方法」と「記載例」も作成し、お客様に使っていただけるわかりやすいチェックリストになるようにしました。
お客様との打ち合わせ(10月以降)
お客様との打ち合わせは10月以降に行いました。
これはいいタイミングだったと思います。
早すぎても忘れてしまいますし、遅すぎても準備を急かしてしまいます。
ベストなタイミングは10月中、11月に入るまでには終わらせておきたいです。
打ち合わせでの確認事項は、以下の事柄がメインです。
- スケジュールの確認
- 年末調整ソフトの使用方法の簡単なご案内
- 法定調書や給与支払報告書に必要な準備のご案内
- 窓口の確認
年末調整のチェック(11月下旬以降)
現在ここにいます。
昨日、今年度初めての年末調整のチェックを行いました。
色々と準備はしてきたものの、実際にチェックを行うと改善点も見えてきました。
来年の改善点にするためにその点も書き留めておこうと思います。
甘かったこと・改善点
入力とチェックを同時進行できるフローを考えておけばよかった
従業員数が多い顧問先様の場合、全ての従業員の年末調整データが出揃う前の段階から、税理士事務所側ででチェックを始められるのが理想です。
例えば従業員数50人で、年末調整の締切りが11月30日の場合、12月1日以降に50人分のチェックを一斉開始するより、11月中からすでに完了している従業員のチェックを開始しておけば、余裕を持ったチェックが行えますし完了時期も早まります。
そうするためには、従業員のステータス確認(年末調整の入力が完了しているのか否か)ができる仕組みを作成しておかねばなりませんでしたが、この点が甘かったです。
MF、freeeともステータス管理が可能なので、来年以降はこの機能を活用すればうまくできそうです。
例えばお客様側でのチェックが未完了の段階では「未確認」、完了すれば「確認済み」にしていただく。
そうすれば税理士事務所では「確認済み」の方のみチェックを進めれば良く、分かりやすいフローになります。
「コメント欄」・「差し戻し」の活用
実際にMFを操作してみると、「コメント欄」や「差し戻し」という機能があることに気がつきました。
スプレッドシートでチェックリストを作成しましたが、確認事項があった場合、わざわざチェックリストに記載せず、MF内のコメント欄に記載し、対象の従業員の方に差し戻しを行った方が分かりやすいなと感じました。
修正が必要な従業員の方にダイレクトに連絡ができますので、お客様側の経理担当の方の確認作業や従業員への仲介業務を削減することが可能です。
また、チェックリストの管理業務の時間も削減できます。
従業員の方にとっても修正ポイントが分かりやすいでしょう。
税理士事務所側では、MF内で完結できるためチェックリストへの転記が不要ですし、MF内に集約されるので、管理面・操作性も向上されます。
まとめ
色々と準備したつもりでも、実際に年末調整のチェックを行ってみると改善点も見えてきました。
一方、余裕をもって準備を行ったからこそ、お客様との打ち合わせが早めに実施できたのは良かった点でした。
来年は改正事項とシステムの仕様変更を早めに行う必要があることも認識できました。
これからもできるだけ早めの準備で余裕をもって作業できる状態を整えることと、都度改善しながらできるだけ低負荷で効率的な方法の模索を続けていきたいです。