会計ソフトに仕訳を登録するときに最初のハードルとなるのが勘定科目ではないでしょうか。
どの勘定科目にするのか迷うこと、ありませんでしょうか?
勘定科目に迷ってなかなか処理が進まずもどかしい、私もずいぶん昔はそのような経験をしました。

でも実は、勘定科目に特に決まりはありません。
期中の取引が全て記帳されていれば、勘定科目は何でもオッケーです。

会社内部のルールで、この取引は〇〇の勘定科目と決まっているのなら、それに従った方が良いでしょうが、
そのようなケースに該当しないのであれば、どの勘定科目にするかはは自由に決めて良いのです。

ただ何でもいいからといって、やっつけ仕事でなんとなく勘定科目を登録して終わり。
というのは少しもったいないなというのが私の考えです。

どうせ作るのであれば、自社のこれからの経営計画や事業戦略に生かせるかたちで作った方が良いですよね。

したがって、決算書を見てどこに問題があるのか、何をすべきかを視覚的にわかるようにしておく。
これが勘定科目を決める上で大事な考え方でないかなと思います。

そこで本日はどのようなポイントで勘定科目を分ければ良いのか?についてお伝えしていきます。

税金の取扱いで分ける

まず1つ目は税金の取り扱いごとに分ける方法です。
会社であれば、①交際費、②消耗品費、③役員報酬は他の勘定科目と分けておくと良いでしょう。

①交際費
会社の交際費は基本的に経費になりません。
ただし、期末時点の資本金が1億円以下の会社については、
・年間800万円まで
・交際費のうち飲食接待費の50%まで

を選択して経費にすることが認められています。

中小企業では、交際費が年間800万円を超えることはまずありませんから、基本的にこの枠内で交際費を使っていれば全額を経費にすることが可能です。
そのため、交際費が上限の800万円に達していないかというチェックが大事になります。

800万円を上回っているかどうかを確認するためにも、交際費を他の勘定科目とは分けて勘定科目を設定すると、金額のチェックがしやすくなりますので有効でしょう。


②消耗品費
中小企業であれば、30万円未満の備品・消耗品は、使った事業年度に一括で経費で落とせるという特例があります。
一方、30万円以上となれば、固定資産に計上し減価償却費を行わなければなりません。

また、10万円以上20万円未満の備品・消耗品であれば、耐用年数にかかわらず3年で償却することも認められます。
耐用年数が4年以上あるような備品・消耗品でも3年で償却することができ、早期に経費計上することができるというメリットがあります。

このように備品・消耗品は、金額によって様々な経理処理が選択できます。
決算書の黒字(または赤字)の具合をみて、経費計上を早期化するのか遅らせるのかを決めることができます。
そのため、備品・消耗品のみを「消耗品費」の勘定科目で登録するのが有効です。


③役員報酬
役員に支払う給与は「役員報酬」として、従業員への「給与」とは別の勘定科目で登録することがお勧めです。
なぜなら、役員報酬は会計期間の開始から3ヶ月を超えてからの変更は基本的には認められません。
(3か月を超えてからの変更は、やむを得ない事情や著しい業績悪化などの一定の場合に限ります)
つまり、会計期間の開始から4か月目以降は役員報酬の金額は同額になるといえます。
もし、同額でなければ同額でない部分は経費に認められません。
したがって、役員報酬が毎月同額で支給されているかはチェックする必要があるということになります。

従業員がたくさんいる会社で、役員への給与と従業員への給与を同じ勘定科目で登録してしまうと、役員に支払われた給与だけをピックアップするのは面倒な作業になります。
役員への給与を「役員報酬」という勘定科目を使って登録すれば、毎月の支給額の確認をスムーズに行うことができます。


また、消費税の課税事業者であれば、消費税のかかる取引とかからない取引で勘定科目を分けることも有効です。
例えば、法定福利費(会社が負担する社会保険料の支払い)、租税公課(印紙代や固定資産税など)、減価償却費、保険料等は消費税のかからない取引です。
それだけ別の勘定科目としておけば、後から消費税のチェックするときに、その勘定科目で登録されたすべての取引の消費税が課税処理されていないかという点チェックすれば済むので、チェックの効率化が可能です。

固定費・変動費で分ける

次に固定費・変動費で分けることもおすすめです。

固定費・変動費というのは、売上げに対してその費用が固定的に発生するのか、変動的に発生するのかという考え方です。
売上げの増加にかかわらず、毎月同額の支払いが生じるようなものを固定費、売上げが増加すればそれに伴って費用も増加するような項目が変動費、ということになります。

例えば飲食店の場合、売上げが増加すれば、その分仕入れも増加します。
したがって、仕入れは変動費です。
食材や飲料の仕入のみを「仕入」勘定科目で登録しておくことで、売上げに対する仕入れの割合(=原価率)の管理に決算書を活用することができます。

自分の会社の原価率が他のお店に比べて高すぎないか(または低すぎないか)という見方もできますし、
毎月の原価率の推移をみて、原価率の上り下がりを把握することもできます。
原価率の値上りが続けば、適切な時期での値上げの判断も必要でしょう。

一方で家賃はどうでしょうか。
家賃は店舗や事務所の移転等がない限り、毎月同額の支払いになりますので、家賃は固定費となります。
「地代家賃」として勘定科目を設けることで、決算書を月別に比較確認した際に、金額が大きく変わっているような月があれば、この支払いはヘンだ!と早期に気が付くことができます。

また、管理会計の考え方では、固定費はできるだけ下げるべきと考えますので、家賃以外の固定費についても独立した勘定科目とし、自社の固定費が総額がいくらであるのかを把握することも有効です。

このように、変動費と固定費の違いを意識して勘定科目を設定することで、経営に役立てることができます。


業種にもよりますが、固定費と変動費の具体例は次の通りです。
変動費…材料費、仕入原価、販売手数料、運送費、製造部門の労務費・水道光熱費・外注費など
固定費…家賃、支払利息、交際費、通信費、租税公課、保険料など

決算書は将来のためのツール

以上のように、勘定科目は肝心な部分を最低限抑えれば、後は会社の自由に決めて良いといえます。

ポイントはあまりルールを厳しくしすぎないと言うことです。
ルールを厳しくするあまり決算書への反映が滞ってしまえば、それだけ決算書の確認が遅れて会社の経営状況を確認するまでに時間がかかってしまいますので、経営判断が遅くなり、その方が大きな損失になってしまいます。

決算書は作ることにこだわるよりも、会社の将来のために役立てるツールとして利用することの方が大事です。
ついつい決算書作りに一生懸命になってしまって、作り終わったときには疲れ切ってしまい、活用するところまで至らないというのはもったいなことです。
決算書は作るものではなくを使うもの、そのくらいの気持ちでまずはおおまかなルールだけ決めて、どんどん決算書を作るタイミングを早期化していく方が良いといえるでしょう。
そしてそれを決算書を活用して経営判断をおこなっていくことに重点をおいていきましょう!

そう考えると、目の前の10円や100円の支払いが何の勘定科目になるか?ということに5分も10分も悩むというのはかえって非効率ですね。おおまかな勘定科目一覧表を作っておくのも有効です。

横浜市緑区の女性税理士。 お金と利益をしっかり残す経営を サポートいたします。 銀行融資、経理、クラウド会計が得意。 税理士だけど、税理士らしくない。 親切丁寧なサポートを心掛けています。 お客様と一緒に成長していくことが私の想いです。 趣味は ・ランニング ・読書 ・料理 ・パン屋さんめぐり。