2023年3月中にスタートアップ創出促進保証が開始されます。
それに先立ち、2月20日から使用保証協会と金融機関が連携して本制度の事前相談の受付を開始しています。
これから会社設立を予定している方、開業後5年未満の会社にとってはぜひチェックしたい制度です!
スタートアップ創出促進保証の背景
銀行などの民間金融機関から融資による資金調達を行う場合、多くのケースで経営者保証が求められます。
直近2022年度上期の経営者保証の提供状況をみると、経営者保証に依存しない新規融資の割合は以下の通り。
信用保証協会付融資の平均 29%
民間金融機関平均 33%
政府系金融平均 52%
(中小企業庁HPより)
まだまだ低い状況といえます。
ではなぜ、経営者保証が必要かというと目的は大きく2つあります。
①経営者の資産からも銀行が貸付資金を回収できるようにしておくこと。
②経営者本人に経営責任を自覚してもらうこと。
ただ、①については形だけのものといえるでしょう。
なぜなら、多くの経営者は経営者個人と会社を一体の存在と考えているものです。
そのため、会社の業績が悪化しているような段階では、会社の立て直しのために経営者個人の資産の多くをすでに会社につぎ込んでいる状況がほとんどです。
会社が融資の返済できなくなったときには、すでに経営者個人の資力がほとんどない状況になっていることも多く、経営者に返済が求めることができるのかといえば必ずしもそうではなと言うことが多いようですです。
つまり、経営者保証の真の目的は②であるといえます。
例えば会社の業績が厳しくなったときでも、経営者が高額な役員報酬を取り続けて最後に会社を倒産させてしまえば、経営者自身はほぼ痛むことなく、債権者である銀行だけが損失を被ることになってしまいます。
また、経営者が会社の資産を外部に移転させたうえで倒産させる、いわゆる計画倒産を企てることも可能です。
経営者保証がない場合、このようなことができてしまうのです。
そこで、このようなモラルハザードを回避すべく、金融機関は経営者保証をとってきたという経緯があります。
一方で、経営者保証を取ることが創業の足かせとなるとの弊害が指摘されていました。
経営者本人が会社の保証人となれば、会社が倒産した際には代表者本人は自宅を含めたすべての資産を失い、場合によっては破産せざるをえない状況になりかねません。
そうなることを懸念し、創業をためらう人がいるというのが経営者保証の弊害というわけです。
しかし、創業を断念する方が増えれば日本経済にとっては大きなダメージです。
そこで政府はこうした懸念を取り除き、創業の促進につながるように経営者保証を不要とする創業時の新しい信用保証制度として、スタートアップ創出促進保証制度を創設することになりました。
とりわけ創業時の融資は経営者保証に頼るケースが多く、今後制度の活用が広がれば、創業がしやすい社会になっていくことが望まれます。
制度概要
制度概要は中小企業庁のHPでも公表されていますが以下の通りです。
保証対象者 | ・創業予定者(これから法人を設立し、事業を開始する具体的な計画がある者) ・分社化予定者(中小企業にあたる会社で事業を継続しつつ、新たに会社を設立する具体的な計画がある者) ・創業後5年未満の法人 ・分社化後5年未満の法人 ・創業後5年未満の法人成り企業 |
保証限度額 | 3,500万円 |
保証期間 | 10年以内 |
据置期間 | 1年以内(一定の条件を満たす場合には3年以内) |
金利 | 金融機関所定 |
保証料率 | 各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せした保証料率 ※保証料率は各信用保証協会にお問い合わせ下さい。 |
担保・保証人 | 不要 |
その他 | ・創業計画書(スタートアップ創出促進保証制度用)の提出が必要。 ・保証申込受付時点において税務申告1期未終了の創業者にあっては創業資金総額の1/10以上の自己資金を有していることを要する。 ・本制度による信用保証付融資を受けた方は、原則として会社を設立して3年目および5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」(後日掲載予定)に基づいた確認および助言を受けることを要する。 |
該当する方はぜひ制度活用を!
スタートアップ創出促進保証の開始は2023年3月中を予定しています。
本制度とは別に、2023年4月からは経営者保証の仕組みが見直され金融機関が経営者保証を求める場合には説明義務が発生します。
今後より経営者保証に依存しない融資を受けられる可能性が広がっていきそうです。
とはいえ、制度が始まること自体を知らないという方もまだまだ多くいらっしゃるでしょう。
融資を含め情報は鮮度が命です。
コロナ融資が始まったときも情報を得て真っ先に借入を行った企業では、着金まで2週間足らずだったようです。
一方で数週間で遅れた企業では、着金まで3か月以上待たされることもありました。
2週間と3か月では資金繰りに与える影響は大きいものです。
金融機関としては、リスク低減の観点からできれば経営者保証は取りたいものです。
そう考えると、スタートアップ創出促進保証制度について金融機関側から積極的な周知が行われる可能性は低いかもしれません。
会社の方から制度活用に向けて積極的に働きかけていきたいものです。