昨日、経理の仕事をされている方とお話する機会がありました。
非常に勉強熱心な方で、インボイス制度もご理解されている様子でした。
ただ一点だけお悩みが、、
それは価格交渉のことでした。

そうなんです、インボイス制度って消費税の仕組みが変わる制度ではあるものの、
その影響により契約変更が必要な場合があります。

「契約」と聞くと途端に身構えてしまいませんか(私だけでしょうか(^^;?)
契約があるということは、そこには法律があるのですよね。
法律に違反していれば、ペナルティもありえます。

コンプライアンス上、ペナルティは避けなければならないということは分かっているものの、実際どうすれば良いか分からない、というのがお客様の声だと感じた出来事でした。

そこで、本日は会社がインボイス開始後に取引先に価格交渉を行う場合に認められること、やってはダメなことについてお伝えいたします。

消費税を納める必要がない事業者であっても、消費税を売値にのせて請求することは問題ない

消費税を納る必要がない事業者でも、消費税を売値にのせて請求すること自体に問題はありません。

例えば、110万円のモノを販売するとします。
A社は、消費税を納める必要がある 
B社は、消費税を納める必要がない 
事業者です。
現在の法律ではA,Bどちらも、110万円で売ってOKです。

A社は110万円のうちの消費税部分(10万円)はのちに納税する必要があります。
B社は消費税を納める必要がありませんから、納付は不要です。
10万円がそのままB社の懐にはいることになります。

AとBで同じ取引をしたのに、10万円を納める必要があるのはAだけ、これって不平等では?という意見もあります。
ただ、これを禁止する法律は現状ありません。

また、消費税を納めるという側面だけから見るとAとBは不平等ですが、
消費税を支払うという側面から見れば、AもBも消費税は支払っているわけです。

Bが消費税を納める必要がない事業者だからといって、
「シャッキーン!このもんどころが目に入らぬか。。(ニヤリ)」
と紋章を出して、消費税の支払いを免除してもらえることもありませんので。

そのため、消費税を納める必要がない事業者(B)であっても、消費税を売値にのせて請求することは問題ないのです。

一方で、こうした問題(10万円がそのままB社の懐にはいる)は以前から課題として認識されていました。
その課題への対処がインボイス制度であるといえます。

インボイス制度は懐に入れることができたお金に対するメス

インボイス制度がはじまったら、先ほどの「そのままB社の懐にはいっていた10万円」にメスが入ることが予想されます。

なぜなら、今後この10万円は買主(C社とします)が負担しなければならなくなるからです。
C社にとっては、新たに10万円の負担増です。

そうすると、C社は追加負担の10万円分の支払代金を下げよう!と考えますね。
買主・C社が支払代金を10万円下げること=売主・B社の売値も10万円減額されることです。
B社にしてみればおおよそ10%の減収となります。
B社にとってみれば非常に大きな問題です。

小規模な事業者にとっては死活問題、だから法律で定めている

先ほどもお伝えしたように、10%の減収は非常に大きいです。
声優さんが制度反対の声を上げられているニュースを見聞きします。
それだけ小規模な事業者にとっては死活問題なのです。

そのようなこともあり、これまでやりとりしていた価額を変えることに対しては、小規模な事業者を守るために種々の法律で規制がされています。

主な法律は2つ!

小規模な事業者を守るための法律は主に2つです。
・独占禁止法
・下請法

いずれも、取引関係のうえで立場の弱い小規模な事業者を守ることが目的のものです。
独占禁止法をより具体的に説明したのが、下請法と考えて良いでしょう。

下請法では、下請代金の減額や購入の強制などを禁止しています。
(公正取引委員会:インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え⽅)

どうやって対応すれば問題がないのか?

では、これらの法律をふまえてどのように対応すれば良いか?
最も大事なのは「十分に協議をすること」です。
協議なく一方的に売値を減額することはNGです。
協議の結果、双方が納得したうえでこれまでの取引価額を見直すことが重要です。

その際のポイントは次のとおり。

・買主の観点
 インボイス導入後は、売主が消費税を納めない立場のままの場合、消費税分を追加で納める必要が出てくる。

・売主の観点
 消費税を納める立場にかかわらず、支払う金額に変わりはない。
 仮に消費税を納めない立場の場合で、売上を減額されてしまえば、支払う金額に変わりがないので利益が下がる。

先ほどの公正取引委員会の例示にNG例は書かれていますが、それを意識しつつ
買主、売主それぞれが自分だけの利益に固執せず、相手を思いやった話し合い、双方の歩み寄りの気持ちが必要と感じます。
そのうえでそれぞれの立場からの落としどころを見つけることになろうかと思います。

まとめ

本日は「消費税をおさめる必要がない立場の方との交渉で気を付けたいこと」というテーマでお伝えしました。
交渉にあたっては、あらかじめインボイス制度を理解し、売主・買主それぞれにどのような影響がでるのかを知っておくことも必要です。

インボイス制度のことでご不明点があればご連絡ください(^^)/
くぼゆき税理士事務所 スポットのご相談

横浜市緑区の女性税理士。 お金と利益をしっかり残す経営を サポートいたします。 銀行融資、経理、クラウド会計が得意。 税理士だけど、税理士らしくない。 親切丁寧なサポートを心掛けています。 お客様と一緒に成長していくことが私の想いです。 趣味は ・ランニング ・読書 ・料理 ・パン屋さんめぐり。